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国保直診のありたい姿検討プロジェクト

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国保直診ありたい姿検討プロジェクト 報告書の公表

 近年、国保診療施設(以下、「国保直診」という)取り巻く環境は大きく変化してきています。医師の臨床研修制度などによるキャリア形成の変化に伴う医師不足、医師のみならず看護師を始めとする医療・介護人材不足、医療の急速な高度専門分化による非コモディティ化、自治体の合併、合併前後より顕著化してきた人口減少・少子高齢化などがみられます。
 特に人口減少・少子高齢化は今後も不可避の状況であるとともに、国保直診が立地する中山間地域・離島でより著明であり、この人口減少・少子高齢化による医療需要の低下、更に支える側の減少は国保直診の運営に大きな影響を与えています。これらに加え、「地域医療構想」「働き方改革」「医師偏在対策」が推進され、これらに対する対応も求められています。今まで経験したことがない社会背景の変化に対し、ただただ施設運営に傾注するだけではなく、国保直診が社会に対しどういった姿で貢献していくことが望まれるか、その「ありたい姿」を提示することを目的に本プロジェクトが始動されました。

 本プロジェクトでは、「コアチーム」を核に、「診療所チーム」、「歯科診療所チーム」、「小規模病院チーム」、「中規模・大規模病院チーム」の4つのチームを構成し、国保直診のありたい姿について検討を重ね、次のようにまとめられました。

国保直診のありたい姿
 私たち国保直診は、人口減少・少子超高齢社会の中で、住民と地域、行政、医療介護福祉施設、および全スタッフをパートナーとして、国保直診の基本理念である「地域包括医療・ケア」の実践を大切に、将来にむけて紡いでいき、地域社会の様々な変化に適切に対応しながら、住民のいのちと暮らし、そして尊厳を守り、その地域とともにあり続けていきます。



診療所 国保直診 診療所は、たとえ地域が置かれた環境がどのようになろうとも診療所の形態をフレキシブルに変化させ、地域包括医療・ケアを届けるという姿でありたいと考えています。
歯科診療所 国保直診 歯科診療所は、口腔を通して人や地域を総合的に診ることで、健康寿命の延伸を目指すとともに、地域住民に寄り添い、自らもそこに生きがいを感じながら、地域包括医療・ケアを実践し続ける医療施設でありたいと考えています。
小規模病院 国保直診 小規模病院は、その強みである機動力と多機能性を発揮し、地域包括医療・ケアの砦として、地域と共にあり続けたいと考えています。
中規模・大規模病院 国保直診 中規模・大規模病院は、住民が安心して地域で暮らせるよう、住民に寄り添った医療を提供するとともに、地域における保健・医療・介護・福祉の中心的役割を果たすことで、地域包括ケアシステムの一翼を担い、その地域になくてはならない医療施設であり続けたいと考えています。

   ※詳細は報告書をご覧ください。
報告書の全文

報告書の全文

※報告書の完成版を掲載いたしました

報告書の構成

報告書の構成

報告書の構成

1.はじめに

 国保診療施設(以下「国保直診」という。)は地域住民が住み慣れた地域でその人らしい生活を継続し、必要な医療と介護を安心して受けられる「地域包括医療・ケア」を支える地域密着型施設として大きな役割を果たしている。しかし国保直診の多くは人口減と少子高齢化が進む離島・へき地・中山間地域に立地していることもあり施設運営は極めて厳しい状況にある。加えて、厚生労働省は「地域医療構想」の推進を図るため2019年に、ダウンサイジングや機能連携・分化を含む再編統合の再検証検討医療機関を公表したが、その中には多くの国保病院が含まれ、今後各地域で地域医療構想実現に向けての協議が再開される中で国保病院を含めた医療提供体制のあり方が議論されることになる。こうした社会情勢の変化は、病院施設に限定されたものではなく、外来機能やかかりつけ医機能の議論も開始されていることもあって、国保直診として自施設の立ち位置を明確にすることが必要である。  全国国民健康保険診療施設協議会(以下「国診協」という。)では、令和2年度老人保健健康増進等事業で「離島・中山間地域における「地域医療構想」の実現と、それと連動する「地域包括ケア」の継続・深化による「まちづくり」に向けた調査研究事業」を実施し、国保直診の役割、再編統合による影響、地域包括ケアシステム取り組みの課題、医師や職員の確保と育成、国保直診管理者の継承等について検討した結果、今後の国保直診の運営を持続していく上で、
  
① 地域包括医療・ケアを継続・深化させるような医療分野への取り組みの必要性 
医療・介護連携、地域住民の啓発や住民活動等の支援、自治体の医療介護関連施策の策定支援や人材育成支援等への取り組み 
地域の状況に応じてその地域においてあるべき姿を目指し必要に応じて組織改変や運営形態の変更を検討するような取り組み
② 地域包括医療・ケアにかかる価値観や想いを共有できる人材の確保・育成の必要性 
承継者候補を増やすための取り組み
医師以外の職員の確保・育成に関する取り組み
職員入職後の教育環境への取り組み
③ 地域住民が地域包括医療・ケアに主体的に参加できる取り組みの必要性
住民が自ら、自分や家族等の予防や健康、地域の医療や介護等の現状についての認識を高めるとともに、自治体による普及啓発や住民活動等の支援に向けた取り組み
自治会の集会や拠点となる居場所等での普及啓発の機会充実のための移動手段の確保や支援の取り組み
普及啓発の大きな力となるボランティアやサポーターの確保・養成支援の取り組み
④ 国保直診等の公的医療機関と自治体がともに地域包括ケアシステムの中核を担う必要性

「1地域1施設」というような限定されたコミュニティにおいては、自治体が国保直診等による地域住民の生活支援まで見据えた医療を可能な限りの質と安全性を維持しつつ継続されるよう支援

「1地域多施設」というコミュニティにおいては、自治体が地域におけるそれぞれの施設の強みや役割を明確にしたうえで、自治体の中に地域包括ケアシステムの中核を担うべき地域全体と未来を見通す力を備えたコーディネーターを育成

 といった課題を抽出することができた。国診協が、これらの課題への対応方法を可能な範囲で提示し、近未来の「国保直診のありたい姿」を描くことは多くの国保直診において持続可能な運営基盤の構築に寄与するものと考える。
 以上の観点から、国診協にとってその会員施設である国保直診の運営上の課題を整理して対応策を提示することは喫緊の検討事項であり、プロジェクトチームを立ち上げ、外部有識者の意見も聞きながら検討を重ねるとともに「国保直診のありたい姿」を描くための提言を本報告書としてまとめる。

2.背景

 国保直診は地域包括医療・ケア(後述)を旗印として活動している。その理念を実現するために、多くの地域特に中山間地域や島嶼部を中心に、多くの先人たちが強いリーダシップを発揮し国保直診を中心に地域包括医療・ケアを展開するモデルを構築してきた。国保直診は、地方自治体が住民の福祉を増進するつまり医療の提供を行う目的で設置する「公の施設」(地方自治法第244条)という立場と、地方自治体が健康教育、健康相談及び健康診査並びに健康管理及び疾病の予防に係る被保険者の自助努力についての支援その他の被保険者の健康の保持増進のために必要な事業あるいは被保険者の療養環境の向上のために必要な事業といった保健介護福祉分野も含んだ事業展開を行う施設(国民健康保険法第82条)、更にはこうした施設が地域における住民のQOLを向上させるため保健・医療の連携及び統合を図る地域包括ケアシステムの拠点としての役割を担うことができることから地方自治体は当該施設との連携を図った保健事業実施に努める(平成16年7月30日厚生労働省告示第307号国民健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針)という立場をもち、このために医療施設に保健福祉介護関連施設を併設し一体化する包括モデルをその運営の基本的モデルと位置付けてきた。
 しかしながら国保直診を取り巻く環境は大きく変化してきている。医師の臨床研修制度などによるキャリア形成の変化に伴う医師不足、医師のみならず看護師を始めとする医療・介護人材不足、医療の急速な高度専門分化による非コモディティ化、自治体の合併、合併前後より顕著化してきた人口減少・少子高齢化などがみられる。特に人口減少・少子高齢化は今後も不可避の状況であるとともに、国保直診が立地する中山間地域・離島でより著明であり、この人口減少・少子高齢化による医療需要の低下、更に支える側の減少は国保直診の運営に大きな影響を与えている。これらに加え、「地域医療構想」「働き方改革」「医師偏在対策」が推進され、これらに対する対応も求められている。
 今まで経験したことがない社会背景の変化に対し、ただただ施設運営に傾注するだけではなく、国保直診が社会に対しどういった姿で貢献していくか、その「ありたい姿」を提示することがいま求められている。

3.地域包括医療・ケアとは

 「地域包括医療・ケア」は全国の国保直診運営の「基本理念」として国診協において定められたもので、次のように定義されている。


地域に包括ケアを、社会的要因を配慮しつつ継続して実践し、住民(高齢者)が住みなれた場所で、安心して一生その人らしい自立した生活が出来るように、そのQOLの向上をめざすしくみ

包括医療・ケアとは、治療(キュア)のみならず保健サービス(健康づくり)、在宅ケア、リハビリテーション、福祉・介護サービスのすべてを包含するもので、多職種連携、施設ケアと在宅ケアとの連携及び住民参加のもとに、地域ぐるみの生活・ノーマライゼーションを視野にいれた全人的医療・ケア
換言すれば保健(予防)・医療・介護・福祉と生活の連携(システム)である
地域とは単なるAreaではなくCommunityを指す

 また、この理念実現のため国診協は活動指針として「国保直診ヒューマンプラン」を以下のように策定している。

 国保直診は、地域における他の保健・医療・介護・福祉の資源との連携、協力のもとに、その中核(拠点)となって、「地域包括医療・ケア」の理念に基づき全人的医療を提供することを目的として活動、その活動指針は
1.  国保直診は、当該地域の地理的、社会的条件並びに診療圏域内の他の医療機関の配置状況に応じ、地域住民のニーズにあった全人的医療の提供を行う
2. 国保直診は、超高齢社会における保健・医療・介護・福祉の連携、統合を図る地域包括ケアシステムの拠点としての役割機能を持つ
3.
国保直診は、既存の保健福祉施設との機能連携を図るとともに、国保総合保健施設を設置し、あるいは、地域包括支援センター、在宅介護支援センター、訪問看護ステーション、介護老人保健施設などの保健福祉施設を積極的に併設していく

 こうした基本理念をもとに国保直診、設置自治体、その住民が協働して地域包括医療・ケアに取り組んできたなか、厚生労働省においても高齢化が進む我が国において「要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現」することが重要とされ、そのシステムの構築を推進することとなり、各自治体がその地域の特性に応じて取り組みを開始している。地域包括ケアシステムの原点は国診協の提唱し、その中心理念と位置付けてきた「地域包括医療・ケアシステム」である。

4.提言

 国診協会員施設の特徴は、その多様性、つまり大規模・中規模病院から小規模病院、有床・無床診療所、病院歯科、歯科診療所まで多様な形態の施設があることである。したがって、国保直診全体としてのありたい姿とともに、今回の「ありたい姿」を検討するにあたり設定した、診療所、歯科診療所、小規模病院(100床未満)、中規模・大規模病院(100床以上)の4分野のありたい姿を提言する。
4-1.国保直診のありたい姿
 私たち国保直診は、人口減少・少子超高齢社会の中で、住民と地域、行政、医療介護福祉施設、および全スタッフをパートナーとして、国保直診の基本理念である「地域包括医療・ケア」の実践を大切に、将来にむけて紡いでいき、地域社会の様々な変化に適切に対応しながら、住民のいのちと暮らし、そして尊厳を守り、その地域とともにあり続けていきます。
4-2.国保直診 診療所のありたい姿
全体総括
 国保直診診療所は、人口減少・少子超高齢社会の中で、たとえ地域が置かれた環境がどのようになろうとも診療所の形態をフレキシブルに変化させ、地域包括医療・ケアを届けるという姿でありたいと考えています。
ありたい姿の具体的内容
●ご本人とご家族の希望をかなえられる多様な地域包括医療・ケアを届けます。

地域住民にとって最も身近でかかりやすい医療機関として、限られた医療資源を最大限活用し、近隣の病院や専門医とも連携しながら、子どもからお年寄りまであらゆる健康問題に対して責任を持って継続的に対応します。

人生の最終章の場が、病院や施設、家など、どのような場所であろうとも、同居・近隣あるいは遠方の家族も安心でき、少しでも悔いがない終い方ができるよう、ご本人の希望に沿った形になるよう多職種でかかわり、医療・ケアを届けます。

住み慣れた地域でその人らしく生き生きと過ごすことができるように、住民や多職種、行政とも協働し、医療を提供する場としてだけではなく、予防から介護・福祉にまで、幅広い視点をもって対応に当たります。
かかりつけ医機能#、在宅医療、人生会議#、看取り、多職種連携
   
健康問題を起点に地域社会の課題を多方面と共有できる関係を作ります。
健康問題のみならず、生活・社会など身近な問題など、なんでも気軽に相談でき、困りごとは、各分野につなげられるよう努めます。
コミュニティを見つめ、地域の人と人とのつながりを大切にし、地域の課題抽出にとどまらず逆に強みも見出だし、行政とも連携し、コミュニティ機能を維持・発展できるよう努めます。
地域住民とともに病気や診療所のこと、地域について学び、この地域でどう暮らしていきたいか、どういう地域になったら幸せかを考え、活動する機会を作ります。
地域ケア会議#、健康教室、カフェ・サロン活動、交通手段の確保、生活支援、感染症対策、災害対策

持続可能な地域包括医療・ケアを提供するため、人材確保・育成に取り組みながら、地域社会の変化に対応していきます。
地域で働く医療従事者を確保するため、現有スタッフのスキルアップや地域で働き続けられるような環境づくりに取り組みます。
地域を診ることができる総合的な医療従事者を、教育機関や周辺の医療機関とも連携し、地域とともに育てます。
診療所の機能強化・病診連携のためにICT#ツールを活用します。
地域の置かれた状況に応じて、診療所の形態を多様に変化させながらも、継続的に地域医療・ケアを提供し続けます。

教育機関や周辺の医療機関との連携、自治医大、地域枠#、特定ケア看護師#、広報PR活動、働き方改革、研修機会の確保、多職種学生・研修医の受け入れ、総合診療専門研修制度、地域医療の次世代を担う後継者の育成、オンライン診療#、退院前カンファレンス、パーソナル・ヘルス・レコード#、グループ化、ネットワーク化、指定管理者制度#、地域医療連携推進法人#、有床診療所の無床化、経営ノウハウの共有化
 
4-3.国保直診 歯科診療所のありたい姿
全体総括
 国保直診歯科診療所は、人口減少・少子超高齢社会の中で、口腔を通して人や地域を総合的に診ることで、健康寿命の延伸を目指すとともに、地域住民に寄り添い、自らもそこに生きがいを感じながら、地域包括医療・ケアを実践し続ける医療施設でありたいと考えています。
ありたい姿の具体的内容
誰一人取り残さず、全ての住民の信頼にこたえて、全てのライフステージに適した取り組みをします。
口腔に関する保健・医療・介護・福祉・生活(セルフケアの支援)に関わり、全身の健康に寄与し、健康寿命の延伸・健康長寿に貢献します。
妊産婦期および乳幼児期から終末期まで継続的に関わり続けます。
保健活動や医療・介護につながっていない住民も対象とします。
「オーラルフレイル#」の予防・啓発によって、フレイル・介護予防に務めます。
低年齢層および高齢者の口腔機能低下症について保健・啓発・治療を行います。
ライフステージ毎の歯科健診結果と全身の健康診断結果の分析を行い、口腔と全身の関係性について分析・公表します。
訪問診療を行います。
認知症対象者の摂食嚥下障害対策および食支援を行い、低栄養を防ぎます。

健康教室、幼稚園・保育園・小中高校での授業、口腔と全身の関係についての啓発、食育の普及、オーラルフレイル#、口腔機能と低栄養予防、医科健診結果との分析、歯科訪問診療、介護福祉施設と連携・協働、摂食嚥下障害対策、食支援
   
行政や住民の身近に存在(地域密着)し、多様な場面に対応できる保健・医療を行います。
地域を総合的に診て、多職種多施設連携に積極的に取り組みます。
地域の行事に積極的に参加し、口腔の重要性について啓発します。 
住民が気付いていないニーズを掘り起こします。
住民が相談しやすい医療機関を構築します。

住民が相談しやすい診療室・待合室、多職種連携、多職種協働事業、地域ケア会議#、地域住民が集まる場(通いの場)、まちづくり会議、区長会、老人クラブ、消防団、お祭り、健康教室、人生会議#、ミールラウンド(食事指導)#
   
次世代および共に働く仲間を増やし仕事がしやすい環境を整えます。
次世代の人材教育・確保を国保直診および教育機関とともにはかります。
ICT#を利用した歯科保健活動や業務の効率化および研修を行います。
地域医療・介護学教育に参画して理解者を増やします。
研究会・学会を主催・共催します。 
国診協・ブロック歯科部会#を設立し、近接で類似の環境にある医療・介護施設職員間での研修を行います。
医師会・歯科医師会とも連携し共に協働する環境を維持します。

医科歯科連携、多職種連携、ICT#、教育、研究会・学会、人事交流、国診協・ブロック歯科部会#、医師会・歯科医師会、定期的なWEBでの研修会(歯科関係者研修会、若手の会設立)
   
開設者の期待にこたえるために取り組みます。
行政との意思疎通を密にします。
開設者の理念・意向を支えます。
施設や機能を存続させます

開設者の理念・意向、定期的な連絡会議、首長や議員との懇談、保健計画(データヘルス計画)への積極的関与、行政との人事交流、健全な経営、地域診断、住民のニーズ分析、需要の変化に応じた診療所機能の柔軟な変更、医療のあり方を検討
   
国診協内外に私たちの姿勢をアピールし、自らの活動を「歯科総合医・歯科総合衛生士」と提唱します。
保健・医療・介護・福祉の専門知識および技術を習得する姿勢を持ちます。
他(多)職種と協働して生活を支えます。
このマインドを醸成し質を向上することで、少人数で活動している歯科診療所職員の課題解決につなげます。
国診協内外への広報、季刊誌「地域医療」に執筆、各専門学会、大学授業での紹介
   
4-4.国保直診 小規模病院のありたい姿
全体総括
 国保直診小規模病院は、人口減少・少子超高齢社会の中で、その強みである機動力と多機能性を発揮し、地域包括医療・ケアの砦として、地域と共にあり続けたいと考えています。
ありたい姿の具体的内容
住民の信頼にこたえるために取り組みます。
住民とともに成長しまちづくりを担います。
地域・住民と語り合います。
地域包括医療・ケアを地域の文化として醸成します。
交流の拠点としての役割を担います。
地域のしまい方に真摯に取り組みます。

地域サロン、住民懇談会、地域交流イベント、健康まつり、健康教室、地域医療学会、健康福祉コーナー(図書館等)、施設の開放(待合室、売店、カフェコーナー等)、院内作品展・音楽会、病院ボランティア
   
多様な場面に対応できる医療を行います。
総合診療に取り組みます。 
小規模でも多機能な病院を目指します。
生活に直結した医療を行います。
関連した福祉活動に取り組みます。
あらゆる年代が何でも相談できる医療機関を目指します。

救急医療、在宅医療、巡回診療、オンライン診療#、精神科領域の初期対応、歯科診療、急性期、回復期、慢性期、レスパイト機能#、看取り、保健事業、介護予防、総合相談窓口、患者・家族支援(在宅療養、認知症、病児保育、医療的ケア児#、不登校、神経発達症、就労、生活、閉じこもり、患者会、家族会等)、居宅介護支援、デイケア、まちは大きなホスピタル#、交通手段の確保
   
周囲との良好な関係を持ち続けます。
仲間との連携を強化します。
仲間と有効な役割分担をします。
専門医療との関係を密にします。

病・病連携、病診連携、医療・介護連携、保健・福祉との連携、地域住民との連携、人材育成(ハブになる職員#)、多職種カンファレンス、多施設共同事業、医療機能の分担(診療科、病床機能)、地域医療連携推進法人#、専門外来、オンライン専門診療
   
職員が生き生きと働くために取り組みます。
やりがいのある職場を作ります。
職員が向上する機会を保障し多様なスキルを持つ人材を育成します。
働き方改革につとめます。
夢を語る会、院内ワークショップ、総合診療医、里山ナース®#・コミュニティナース#、ICT#の活用
   
共に働く仲間を増やすために取り組みます  安定した医師確保体制を確立します。
メディカルスタッフ派遣システムの導入を検討します。
医学教育に参画して理解者を増やします。
ICT*を活用した情報発信により理解者を増やします。

総合診療プログラム、都道府県派遣、初期臨床研修(地域医療研修)、大学との関係構築、寄付講座#、人材派遣会社、ナースバンク、外国人介護士、地域医療連携推進法人#、学生実習(各職種)、中高生(授業、職場体験)、SNS、ホームページ、人材育成(ロールモデル#)
   
開設者の期待にこたえるために取り組みます。
行政との意思疎通を密にします。
施設や機能を存続させます。

定期連絡会議、懇談会(首長、議員)、保健計画への積極的関与、行政との人事交流、健全な経営、地域診断、ニーズ評価、医療機能の確認、人材育成(医事知識、経営、マネジメント、ICT#等)
   
4-5.国保直診 中規模・大規模病院のありたい姿
全体総括
 国保直診中規模・大規模病院は、人口減少・少子超高齢社会の中で、住民が安心して地域で暮らせるよう、住民に寄り添った医療を提供するとともに、地域における保健・医療・介護・福祉の中心的役割を果たすことで、地域包括ケアシステムの一翼を担い、その地域になくてはならない医療施設であり続けたいと考えています。
ありたい姿の具体的内容
地域における保健・医療・介護・福祉の中心的役割を果たし、地域全体を支えます。

周囲の医療機関や施設との連携や役割分担を推進し、地域の実情に応じた医療を提供します。 中規模病院においては、かかりつけ医機能#の推進にも努めます。
医療介護連携のハブとなる医療機関を目指します。
多職種で連携し、治す医療だけではなく、その人の生活を支え、寄りそう医療を提 供します。
へき地診療所支援にも積極的に取り組みます。

医科歯科連携を強化するとともに、一般の歯科診療所では対応困難な事例へ対応します。(リスクの高い患者や緩和ケアの患者への対応、周術期口腔機能管理#、予防歯科#など)

地域包括医療・ケアシステムの一員としてかかりつけ医が行っている在宅医療を支援します。(かかりつけ医単独では対応困難な事例への支援、看取りの支援、緊急時入院病床の確保)
かかりつけ医機能#、医療介護連携のハブ、多職種連携、生活を支え寄りそう医療、へき地診療所支援、医科歯科連携、在宅医療支援
   
専門医と総合診療医が協力して、より専門的であり、かつ総合的に診療できる体制を目指します。
総合診療医と専門医、多職種で連携し、高齢化・多様化する社会に対応すべく、単一疾患だけではなく、一人の患者が抱える多くの健康問題、マルチモビディティ(多疾患併存状態)#に総合的に対応します。
高度な専門医療に関しては、自施設の専門医または地域の医療機関と連携して対応します。
緩和ケアについても積極的に取り組みます。
救急医療体制の維持、災害時の拠点、感染症対策の拠点を担える施設を目指します。
総合診療医、専門医、緩和ケア、救急医療、災害拠点、感染症対策
   
地域に根付いた医療や介護の魅力を発信するとともに、地域医療マインドを持った人材を育成します。
卒前、卒後教育にも積極的に取り組むとともに、地域医療の魅力を発信します。
他職種を尊重し、他職種と連携をとることのできる人材を育成します。
地域に目を向けることのできる、地域医療マインドを持ったスタッフの育成を目指します。
人材育成、チーム医療、地域医療マインド
   
行政と連携し、住民の健康づくりや地域づくりに取り組みます。
  行政との連携、住民との対話を通し、地域で必要とされる保健・医療・介護・福祉を常に検討していきます。
  地域住民の自助・互助能力向上へ寄与します。(健康教室、人生会議#、食育・食支援、ボランティアの育成など) 
健康づくり、地域づくり
   
医療 DX#の進展にも積極的に取り組みます。
業務を効率化することで、働き方改革を推進し、魅力ある職場作りに取り組み ます。
ICT#を活用した多職種連携の強化や、地域でのネットワークの構築を図るとともに、AI の活用やオンライン診療#などに取り組み、効率的かつ効果的に医療を提供します。
 医療DX#の普及に努め、地域全体の医療知識・技術の向上に活用します。
医療DX#、働き方改革、オンライン診療#
#用語集
あ:ICT
ICTとは、Information and Communication Technologyの略称で、「情報通信技術」と訳される。コンピュータやスマートフォン、インターネットなどを利用して情報を伝達する技術のことを指す。
い:医療DX
保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適な基盤を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えること。(参考 厚生労働省「医療DXについて」)
い:医療的ケア児
医療的ケア児とは、日常的に医療的ケアが必要となる児童のこと。例えば、NICU等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引等の医療的ケアが日常的に必要な子どもたちが該当する。医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律により、医療的ケア児及びその家族に対する支援が行われており、この法律は、医療、福祉、保健、子育て支援、教育等の多職種連携が必要不可欠であることを示している。
お:オーラルフレイル
口に関するささいな衰えを放置したり、適切な対応を行わないままにしたりすることで、口の機能低下、食べる機能の障がい、さらには心身の機能低下まで繫がる負の連鎖が生じてしまうことに対して警鐘を鳴らした概念。(参考 日本歯科医師会)
お:オンライン診療
スマートフォンやパソコン、タブレットなどの情報通信機器を用いて、医療機関の予約から診察、決済までをインターネット上で行う診療方法。
か:かかりつけ医機能
かかりつけ医とは、何でも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師。その機能を以下に示す。
・かかりつけ医は、日常行う診療においては、患者の生活背景を把握し、適切な診療及び保健指導を行い、自己の専門性を超えて診療や指導を行えない場合には、地域の医師、医療機関等と協力して解決策を提供する。
・かかりつけ医は、自己の診療時間外も患者にとって最善の医療が継続されるよう、地域の医師、医療機関等と必要な情報を共有し、お互いに協力して休日や夜間も患者に対応できる体制を構築する。
・かかりつけ医は、日常行う診療のほかに、地域住民との信頼関係を構築し、健康相談、健診・がん検診、母子保健、学校保健、産業保健、地域保健等の地域における医療を取り巻く社会的活動、行政活動に積極的に参加するとともに保健・介護・福祉関係者との連携を行う。また、地域の高齢者が少しでも長く地域で生活できるよう在宅医療を推進する。
・患者や家族に対して、医療に関する適切かつわかりやすい情報の提供を行う。(参考 日本医師会・四病院団体協議会)
き:寄付講座
寄付講座とは、大学や研究機関において、産学連携の一環として行われる研究・教育活動の一種で、奨学を目的とした民間企業や業界団体などからの寄付金(奨学寄附金)を財源に、期限付きの客員教授などを招いて開設される講座のこと。
こ:国診協・ブロック歯科部会
国診協が設置している全国8ブロックそれぞれにおいて設置を検討している歯科保健部会のこと。
こ:コミュニティナース
『人とつながり、まちを元気にする』コミュニティナースは、職業や資格ではなく実践のあり方であり、「コミュニティナーシング」という看護の実践からヒントを得たコンセプト。地域の人の暮らしの身近な存在として『毎日の嬉しいや楽しい』を一緒に作り、『心と身体の健康と安心』を実現する。その人ならではの専門性を活かしながら、地域の人や異なる専門性を持った人とともに中長期な視点で自由で多様なケアを実践する。
さ:里山ナース®
「里山ナース」®とは、日本の医療現場において、地域に根ざした看護を提供する看護師のこと。国民健康保険飛騨市民病院(岐阜県)が提唱した。この看護師は、地域住民との信頼関係を築き、地域の健康問題に取り組むことが求められ、また、地域住民の健康状態を把握し、必要な医療や介護サービスを提供することも重要な役割。「里山ナース」®は、地域住民とのコミュニケーションを大切にし、地域のニーズに合わせた看護を提供することが求められる。そのため、地域住民との信頼関係を築くことが重要であり、地域の文化や風習にも精通している必要がある。
し:指定管理者制度
公の施設の管理に関する権限を指定管理者に委託して行わせることのできる制度。公の施設の管理主体は法人、その他の団体であれば、特段の制限は設けない。(参考 公務員ドットコム)
し:周術期口腔機能管理
手術前後や、化学療法、放射線療法などの治療を行う際に、歯科医師や歯科衛生士が患者の口腔衛生状態や口腔機能を評価し、口腔に関する合併症・有害事象を回避し、口腔機能維持増進に努めること。
し:人生会議(#2)
ACP:アドバンス・ケア・プランニングとも呼ぶ。
もしものときのために、自分が望む医療やケアについて、前もって考え、繰り返し話し合い、共有する取り組み。(参考 厚生労働省)
ち:地域医療連携推進法人
地域医療連携推進法人とは、地域において良質かつ適切な医療を効果的に提供するため、病院等に係る業務の連携を推進するための方針(医療連携推進方針)を定め医療連携推進事業を行う一般社団法人を都道府県知事が認定(医療連携推進認定)する制度。
ち:地域ケア会議
高齢者個人に対する支援の充実と、それを支える社会基盤の整備とを同時に進めていく、地域包括ケアシステムの実演に向けた手法。 具体的には、地域包括支援センター等が主催し、医療、介護等の多職種が協働して高齢者の個別課題の解決を図るとともに、介護支援専門員の自立支援に資する実践力を高める、個別ケースの課題分析等を積み重ねることにより、地域に共通した課題を明確化する、共有された地域課題の解決に必要な資源開発や地域づくり、さらには介護保険事業計画への反映などの政策形成につなげる。
ち:地域枠
地域医療に従事する医師を養成することを主たる目的とした学生を選抜する枠であり、地元出身者を選抜する枠や大学とその関連病院に勤務することを従事要件とした制度。(参考 厚生労働省)
と:特定ケア看護師
厚生労働省で定める21区分38の特定行為を実施することが出来る看護師であり、臨床推論をもとに「診る」と「看る」とで患者を全人的にとらえ、医療・介護を提供する看護師。(参考 JADECOMアカデミー)
は:ハブになる職員
関係機関とのハブになれる職員。組織の壁を越えて循環できる人材で、それぞれが持つ力を十分に引き出しイノベーションが生み出されるシステムの構築を進める人材のこと。
は:パーソナル・ヘルス・レコード
個人の健康・医療・介護に関する情報。一人一人が自分自身で生涯にわたって時系列的に管理・活用することによって、自分の健康状態にあった優良なサービスを受けることができるのを目指している。血圧手帳、お薬手帳、糖尿病連携手帳、母子健康手帳など、もともとある「手帳文化」をデジタル化し、データとして一元的にまとめることにより、自分で管理・活用していく取り組み。(参考 長寿ネット)
ま:まちは大きなホスピタル
町の道路は病院の廊下、自宅のベッドは病院のベッド、電話はナースコールと思えるほど医療的な安心感を地域に提供できるようにあらゆる取り組みを行っていこうとする考え方。日南町国民健康保険日南病院(鳥取県)が提唱した。積極的に出かける医療で地域の状態を知り、地域課題に対して保健・医療・介護・福祉の専門家のみならず行政や住民も一体となった取り組みでこれの達成を目指して取り組む。
ま:マルチモビディティ(多疾患併存状態)
複数の慢性疾患が一個人に併存している状態であり、中心となる疾患を特定できない状態。患者を包括的、統合的に捉え、継続して診療を行う必要がある。
み:ミールラウンド(食事指導)
ミールラウンドとは、歯科医師、看護師、言語聴覚士、栄養士などの多職種の専門家が、実際の食事場面を通じて摂食状況を見て回ること。
よ:予防歯科
虫歯や歯周病の発生を未然に防いで、口の中の健康を維持することを目的とした治療。
れ:レスパイト機能
レスパイトとは、短期間の休息をとることができるサービス。このサービスを利用することで、家族が一時的に休息をとることが可能。例えば、家族が介護をしている場合、その方を病院に預けて、一時的に自分の時間を取ることができる。また、家族が急な用事や病気になった場合、その方を病院に預けて、自分の用事や病気の治療に専念することもできる。
ろ:ロールモデル
ロールモデルとは、自分の考え方や行動のお手本となる人物のこと。ロールは「役割・役目」、モデルは「見本・模範」を意味する英語。

5.ありたい姿実現に向けた国診協の取り組み

 国診協は、全国の国保直診において「地域包括医療・ケア」の実践に努めるとともに国保直診を拠点として「地域包括ケアシステム」の構築を推進することを目的とし、全国国保地域医療学会、研修会の開催や調査研究事業の実施等の活動を行っています。こうした活動を継続しつつ、会員施設である国保直診が「ありたい姿」を実現するために以下のような取り組みを行っていきます。

保健・医療・介護・福祉に関連した国の動向情報をいち早く収集し、会員施設へ提供するとともに、情報に関連した会員施設の現状を把握しその取り組み方向性を会員施設に提示します。
会員施設が継続的に運営できるよう現状と課題を把握し、相談対応しながら、その対応策を検討、提示するとともに、必要に応じて国あるいは自治体といった関係機関に提言します。
国保直診の存在意義を社会にアピールし続けます。
医師会、歯科医師会をはじめ関連する団体とのより一層の連携を図り、様々な課題に関して情報共有を図るとともに、必要に応じて協議をはかります。
人材確保・育成の一環として、大学をはじめとしたその養成機関に対し学びの場としての直診施設の価値をアピールし続けるとともに、国診協自らも、病院長・診療所長、各メディカルスタッフを対象に地域医療マインドの醸成や、地域医療そのものの在り方、経営、教育手法などに関連した研修会を開催することなどによりこれからの国保直診を担う人材育成に取り組みます。また、医療介護スタッフの雇用継続が可能となるためには働きやすい労働環境整備が必須であることを会員施設に周知するとともにその実現のための取り組み例を提示します。
国保直診ならではの地域医療や地域包括医療・ケアに関する研究課題に取り組み、論文や報告書作成により社会に情報発信するなど地域医療の学究分野への貢献を支援します。
関係団体などとの協議・連携のもと、各チームが提示した「ありたい姿」実現のための総合的戦略を検討しその実現に努力します。
日本地域医療学会の構成団体の一つとして地域総合専門医養成に積極的に降り組むよう会員施設に働きかけるととともに、他の地域医療や総合診療を支える活動を行う学会や教育機関などの団体との連携もより一層図っていきます。

6.ありたい姿実現に向けた国保直診の取り組み参考事例①

事例分類項目にもとづいて収集した参考事例を提示する。

【項目①】周辺施設あるいは団体との連携に関する具体的事例
1. 限られた地域資源の最大限の活用例
2. 周辺医療・介護施設の縮小撤退への対応例(負担増への対応例)
3. 多施設連携例、病診・病病連携充実例
4. 広域的連携例、土地勘が少ないところとの広域連携例
5. 医科歯科連携例
6. 行政との連携例、行政との意思疎通や理解向上の取り組み例、首長交代時の方針変更対応例
7. 住民との連携例
8. 連携強化におけるICT 利用例
9. 自施設が果たすハブ機能例
10. へき地診療所支援例
11. 他施設の持つ課題が地域の医療全体に影響したことへの対応例

小項目 施設 都道府県 取組内容
1 南砺市地域包括支援センター 富山県 障害から介護保険への移行支援の中から、仕事や生活の自立を目標に、地域資源を活用した事例。
1 あがの市民病院 新潟県 医療圏内診療所、中小病院と、当院の高度・高額医療機器(CT、MRI、シンチ等)を共同利用できる仕組みを構築し、利用していただき、地域内連携を深めている。
1 平川市国民健康保険碇ヶ関診療所 青森県 当院ではCTを保有していないため、CTを保有する近医に医療機器の共同利用(画診共同/CT)を依頼している。なお、患者様はCT撮影のみを行うために近医に赴き、診断は当院の医師が行っている。
1 日光市立国民健康保険栗山診療所 栃木県 CTやMRIなどの医療機器は、「日光ヘルスケアネット」を通じて共同利用を行っている。また当施設は栃木県採用医師(自治医大卒業後の義務年限内医師)の派遣により運営しており、なかには内視鏡を行えない医師もいるため、他医療機関に上部内視鏡検査を委託することもある。
1 佐井歯科診療所 青森県 歯科診療所施設の老築化に伴い、村から撤退した銀行の建物をリフォームして使用している。キャッシュコーナーと歯科診療所の入口は同じだが、キャッシュコーナーも撤去予定となり、利活用について検討中。
1, 10 久々野、朝日、高根診療所 岐阜県 久々野、朝日、高根の3診療所で「南高山医療センター係」としてスタッフを配置し、医療人材の相互支援体制を構築している。働き方改革や個別の事情等による欠員を相互に補完し、医療資源の少ないへき地において、可能な限り休診を避ける運用を行っている。
1, 3 公立南砺中央病院 富山県 近隣病院及び施設(特別養護老人ホーム)へのリハビリ専門職(PT・ST)の派遣を行っている。派遣先の病院・施設で専門職種によるアセスメント及びプログラムの立案や職員への知識・技術の伝達を行っている。また、派遣先の病院・施設において研修会を開催している。派遣先の病院・施設の機能や現状を当院スタッフが理解することで、転院先で継続して取り組むことができるリハビリプログラムを提供することができる。
1, 3, 6 国民健康保険宇検診療所 鹿児島県 村内唯一の診療所で、居宅事業所も2つしかなくケアマネジャーも限られている。その中で村内の住民や高齢者たちの困りごとや支援が必要としている事などを、行政や居宅事業所と常にジョインなどのツールを使用して連絡をとりあいながら支援している。
1, 3, 6, 8 公立那賀病院 和歌山県 地域の病院、福祉施設、サポートセンター(医師会、市)の栄養連携。重症化予防連携。
3 北広島町雄鹿原診療所 広島県 コミュニティ内で唯一の医療機関である診療所と、複数の介護施設でネットワーク(ICTではなく人的)を作って共働している。限られた資源を有効に活用するために密な関係を保っている。また後方支援病院から研修医などを積極的に受け入れ、教育とともに人的交流および診療協力も効果として得られている。
3 あがの市民病院 新潟県 介護施設では、施設内急変・状態変化対応に苦慮している。2017年から、市内介護施設と、「あがの介護・病院連携の会」を設立し、隔月で定期開催している(ここまで37回開催)。この連携の会では、「患者情報連絡票」を作成し、外来受診をよりスムーズにし、顔の見える関係性作りを行っている。ここには行政も参加している(サブアキュート機能の強化)。
3 あがの市民病院 新潟県 2015年から、医療圏内基幹型病院と「骨パス」、「脳パス」を作成し、骨折事例、脳血管疾患事例を、地域包括ケア病棟で受け入れ、リハビリを行い、退院支援をスムーズに行えるよう、「地域クリニカルパス」を実践している(ポストアキュート機能の強化)。
3 三戸中央病院-田子診療所 青森県 年4回の連携会議で課題解決をする。最近の解決例は、画像共有ができるようになったこと。診療体制を維持するため、双方の医師が必要に応じて両施設で勤務を行う。診療所が持つ老健施設への入退院で患者数調整を行う。将来的にはスタッフの相互交流を行う予定。
3 飛騨市民病院 岐阜県 「高原郷ケアネット」という、医療、介護、福祉、行政、歯科、調剤薬局、在宅サービスなどの事業所間で、行政区を超えた多職種連携の研修会を定期的に開催しています。それによってお互いの顔のみえる関係つくりが達成されている。
3 三浦市立病院 神奈川県 診療所で働く看護師・准看護師(以下クリニックナースという)等医療従事者の研修を神奈川県医師会の委託事業として令和元年の開始年より三浦市医師会は毎年受託している。この事業を当院看護科が講師となり主導して地域の顔の見える関係につなげている。
3 淡路医療センター 兵庫県 医師派遣 患者紹介。
3 宝塚市国民健康保険診療所 兵庫県 宝塚シニアコミニティー(特別養護老人ホーム)と契約し、週に一度入所者の口腔ケア、月に一度の摂食・嚥下指導を行い、誤嚥性肺炎予防につとめ、また、年に2回施設で入居者の歯科検診を行い、歯科治療が必要な場合は、治療を行っている。
3 公立藤田総合病院 福島県 当院医師と地域介護関連事業(各種施設・居宅・地域包括・行政)の交流を目的に、年単位で介護が抱える事情をテーマとして、講演方式で開き、後に立食で更にコミュニケーションを図れる環境がある。
3 国東市民病院 大分県 医療介護連携の促進のために、当該地域にある、ほぼ全部の病院・診療所・介護施設を年3回以上訪問し、連携の課題や当院への要望等にかかる意見聴取を行っている。また、当院所属の職位部長以上の医師複数(10名程)を市医師会員に登録し、医師会との交流を図っている。
3 広島県歯科医師会 広島県 広島県全体の病院歯科に特化した連絡協議会が1年に1度開催される。病院歯科の情報を広島県全体で共有できるようになっている。また、同時に歯科の最新情報などの研修会も開催される。
3 中之郷歯科診療所 滋賀県 市内3施設の特養とグループホームと契約し、入所時健診、及び定期健診を行い、必要に応じて訪問歯科診療に繋げている。週1回、木曜日の午後を訪問診療日として設定し、その他にも在宅の訪問診療の依頼も受けている。
3 県北西部地域医療センター国保白鳥病院 岐阜県 地域内で在宅医療に取り組んでいる民間診療所と契約し、診療所医師不在時の在宅患者の緊急や看取りの対応を行っている。
3, 4,10 県北西部地域医療センター国保白鳥病院 岐阜県 郡上市、高山市、白川村の2市1村が社員となった地域医療連携推進法人を立ち上げ、この2市1村内にある国保病院と国保診療所で広域的ネットワークを形成し、相互支援体制の中でこの地域の地域包括医療・ケアにかかわるとともに、国保病院を基幹医療機関として設定することで医師を含めたメディカルスタッフの在籍型出向により人事交流を行っている。
3, 5 大洲市国民健康保険河辺診療所 愛媛県 緩和医療のモデル事業から発展して在宅医療介護連携事業症例検討会を月1回医師会の訪問診療医、バックベッドの医師会立病院と市立病院の医師看護師地域連携室職員、訪問看護ステーションの看護師、居宅支援事業所のケアマネ、調剤薬局の薬剤師、大洲市と内子町の地域包括支援センター職員、保健福祉課職員、管轄の八幡浜保健所職員、地域の歯科医師会代表、管轄消防署代表が集まって在宅診療している患者にて症例検討会をしている。
3, 6 足寄町国保病院 北海道 多施設多職種参加により医療機能の分担を検討したほか、福祉のあり方も検討し、その結果をもとに行政が生活支援ハウス、高齢者複合施設を建設した。ソフトの構築がハード建設に先行した事例。
3, 8 日高川町国保川上診療所 和歌山県 遠隔診療支援(和歌山医大)、 病院との診療情報連携システム(青洲リンク)。
4 美波町国民健康保険美波病院 徳島県 美波町がNGO法人のAMDA(岡山市)と災害協定を結んでいる。その関連で、倉敷中央病院など岡山県の病院と、災害訓練やWeb講演会を行い、災害時の連携を準備している。
4, 8 まんのう町国保造田歯科診療所 香川県 毎月1回、当地域や周辺地域の医療機関、介護事業所、民生委員、警察署、救急隊などが集まり医療介護の情報交換、事例検討をしている。看取りや認知症のケースについてはICT(K-MIXRやMCS)を活用して情報共有しながら、在宅医療介護を行っている。
5 芸北歯科診療所、深井歯科 広島県 国保診療施設である芸北歯科診療所が令和4年度末で閉院となり、在宅および施設訪問歯科の存続が立ち行かなくなりそうだったが、新たに近隣の私的医療機関である歯科開業医と連携を模索し、なんとかスムーズに業務移行ができた。
5 芦屋中央病院 福岡県 町内の歯科開業医と連携し、週2回入院患者の口腔チェックを行い、誤嚥性肺炎等の予防に取り組むとともに必要に応じて歯科診療に繋げている。
5 新温泉町国保歯科診療所 兵庫県 地域の病院と地域歯科医師会で定期的に連携事業を行っている。病院の入院患者に対して、医科主治医から治療依頼があれば、当科へ受診不可の場合は、病院へ往診行い、歯科処置(往診でできる範囲の処置、義歯修理・調整、抜歯、歯周治療を含めた口腔ケアなど)を行っている。
5 さぬき市民病院 香川県 ・歯科衛生士(DH)2名採用。
・地区歯科医師会より、週1回歯科医師が往診にて口内評価、DHに指示。
・必要に応じてかかりつけ歯科に治療依頼。
・退院時にはDHが連携シート作成。
5 公立みつぎ総合病院 広島県 緩和ケアに入院した全ての患者は、医師から歯科へと紹介される。その後、週1回の口腔ケアで介入し、口腔内に発生する問題を未然に予防したり発生した問題に対処したりしている。また、退院する場合は在宅での口腔ケアをおこない、再度入院する場合には病棟での口腔ケアを行い切れ目のない歯科の介入を行っている。
5 県北西部地域医療センター国保白鳥病院 岐阜県 郡上市歯科医師会と契約し、月1回入院患者の口チェックを行い、誤嚥性肺炎予防に取り組むとともに、必要に応じて歯科診療につなげている。
6 三浦市立病院 神奈川県 三浦市では、行政と医師会と市立病院が一体となり胃がん検診を進めてきた。平成13年には早くも内視鏡検診を導入し、平成24年には胃がんリスク検診に統一した。平成28年には中学生対象にピロリ菌検診を導入している。中学生の陽性率は何と1.0%前後である。
6 姶良市立北山診療所 鹿児島県 行政との連携に関して、週に一度行政担当者が施設に行き、情報共有、連携を図っている。
7 飛騨市民病院 岐阜県 地域住民の皆さんが自発的に立ち上げた「飛騨市民病院を守る会」あり。会員数が約500名。各種ボランティア活動、病院デイルームへの椅子・テーブルの寄付などや講演会、定期総会などを開催し、地域住民の立場より病院への支援が行われている。
7 加賀市医療センター 石川県 病院の専門職員が直接住民の集まる場所に伺い、医療に関する疑問に分かりやすくお答えする「まちあい室講座」を実施している。講演するテーマについては医師や看護師、医療技術職など多職種が担当し、講座に対応している。
7 加賀市医療センター 石川県 毎月刊行される市の広報誌に「KMC院長室から」というコーナーを設け、市における医療、介護、病院の役割、病院で取り組んでいるものやこれから取り組もうと思うものなどを分かりやすい言葉で情報発信している。
7 宝塚市国民健康保険診療所 兵庫県 地元の自治会と連携し、月に一度の健康相談、健康教室を歯科保険センターの保健師一名、歯科衛生士一名で行っている。
8 加須市国民健康保険北川辺診療所 埼玉県 ICTによる地域医療のネットワークを構築するため、平成24年に、埼玉利根保険医療圏ネットワークシステム(愛称:とねっと)が運用開始(加須市など7市2町)。しかし、登録患者数の伸び悩み、実際の稼働状況、運営資金も問題などのため、R5年に運用が終了となった。当初は先進的な取り組みで注目を集めたが、様々な課題が浮き彫りとなり、「とねっと」としての役割は終了となった。次世代のICTへ期待される結果となっている。
8 国保直営総合病院君津中央病院 千葉県 入退院支援クラウドサービスを導入し、連携機関との円滑・効率的な転院運用が可能となった(転院調整業務の負担軽減にもつながっている)。
8, 9 公立藤田総合病院 福島県 行政予防事業への協力体制含め、各疾患別にICT関連地域ネットワークを構築(筋痙縮・慢性腎臓病・骨粗鬆症)、病診連携が図れるシステムがある。
9 黒潮町国保拳ノ川診療所 高知県 高知医療センター、県へき地医療⽀援機構専任担当官として実績を挙げてきた澤田努医師が赴任、「医師確保から医療確保へ」の考えの元、精力的に地域医療に取り組んでいる。具体的には、町、地域住民と連携した災害時の医療救護計画やオンライン診療等がある。
10 国東市民病院 大分県 大分県僻地医療支援機構の下、近隣の姫島診療所との間に「代診医の派遣に関する協定を結んで、小児科医を派遣し、島の小児医療の推進に寄与。
該当なし 松本市立病院 長野県 大学病院との転院における協定。

6.ありたい姿実現に向けた国保直診の取り組み参考事例②

事例分類項目にもとづいて収集した参考事例を提示する。

【項目②】地域とのかかわり構築のための具体的事例
1. 地域社会の課題抽出・検討・取り組み例
2. 住民とともに行うまちづくり例
3. 地域住民の自助・互助能力向上への取り組み例
4. 交流拠点としての役割を担う例
5. 地域そのもののしまい方に向けた取り組み例
6. 住民の専門医志向への対応例
7. 住民の総合診療や地域包括ケアへの関心や理解不足に対する対応例
8. 高齢者対策と少子化対策との対応バランス例(少子化に重点が置かれると高齢者対策費用の軽減が生じる可能性に対する対応例)

小項目 施設 都道府県 取組内容
1 公立那賀病院 和歌山県 地域のすし屋とフレイル予防弁当のコラボ、レンチンレシピの作成等、地域住民のために取り組まれている。
1 小林市立病院 宮崎県 西諸医師会、市民団体、小林保健所、小林市役所、当院で月1回の連携会議を実施し、近況報告や各視点からの課題を抽出し、共有等を行っている。
1 佐井村歯科保健センター 青森県 関係機関で情報共有する。歯科診療所(歯科医、歯科衛生士)学校(校長や養護教諭、PTA)保育所(保育士、調理師)役場(保健師、教育委員会)が集まり、子供たちの健康について話し合い、情報を共有することで、健康づくりや生活習慣の改善に努めている。保育所は年5回のむし歯予防教室、小・中学校では各2回ずつ歯科保健指導を実施。
1, 2 まんのう町国保造田歯科診療所 香川県 医療介護の専門職や地域のボランティアが中心となり、移動手段を持たない地域高齢者を集めて、提携するスーパーマーケットにお買い物に行き、帰ってからみんなで会食する毎月1回の買い物ツアーを4年以上続けている。高齢者を取りまく社会環境の変化に対応する介護予防対策と考えている。
2 飛騨市民病院 岐阜県 「コミュニティメディカルデザイナー養成講座」として富山大学総合診療部の山城清二教授の支援のもとで、地域住民として地域の健康まちつくりへの参加を呼び掛けた啓発活動。
2 京丹後市国民健康保険直営間人診療所 京都府 京都府北部の日本海側に面した過疎地域に位置する間人(たいざ)診療所の周辺は公共交通手段が限られている地域が多く、また、車いす利用等のため通院困難な患者がいるため、地元の自治会と一体となり車いす仕様のミニバンにより送迎を行っている。
2 浜松市国民健康保険佐久間病院 静岡県 地域マップや防災を題材としたまちあるきなどのイベントを開催することで図書館や商工会、観光協会と関り、地域の関係人口増加につとめたり、図書館に地域の健康福祉コーナーを設けたりするなどの活動につながっている。
2 南高山地域医療センター(久々野・朝日・高根診療所) 岐阜県 診療所の考え方・これからの診療所の在り方を知ってもらうため、また、住民の声を聞く機会として健康教室や寸劇を交えた説明会などを開催した。
2 大山町国民健康保険大山診療所 鳥取県 地域自主組織と一緒に、地域医療を考える会を定期開催し、住民みんなで考えたり、医師が自治会出かけて、健康講座を行ったりしている。
2 高梁市国民健康保険成羽病院 岡山県 「出前講座」を実施している。これは、「地域の皆様に親しまれ、信頼される病院」を目指す基本理念のもと、市民団体が主催する集会等に当院医療スタッフが講師として出向き、無料で講習を行うことで、市民の医療、健康づくりへの意識向上を図ることを目標としている。年に4回程度の依頼があり。
2 御調保健福祉センター 広島県 1.6歳児健診、2歳児相談、3歳児健診で言語、運動発達、対人関係など何らかの支援が必要な親子に対して母親同士の交流、仲間づくりを目的に1か月に1回当院保健福祉センターで保育士および子育て支援コーディネーターを中心として多職種が関わる「ぽかぽか子育て教室」並びに「親子教室」を行っている。
2 鏡野町国保上齋原歯科診療所 岡山県 【地域での会議に参加】国保運営協議会(保険料率決定 保健事業企画実行など)、地域ケア会議、まちづくり会議、小中学校授業、住民歯科健診、糖尿病重症化予防講座、データヘルス計画参加、SOSネットワーク主催、認知症事例検討会、議員との懇談会を通して、地域との関わり構築している。
2, 3 南砺市地域包括支援センター 富山県 市民ボランティアと取り組むフレイル予防
2, 3 中之郷歯科診療所 滋賀県 併設された医科、市役所文所、社協、まちづくりセンターなどでの啓発活動を絶えず行い、住民との関わりを持っている。
2, 3 尾道市北部地域包括支援センター 広島県 社会福祉協議会と共働し、民生委員や公民館長、周辺の高齢者施設の職員、町内の銀行職員、国保直診で働く多職種などと一緒に認知症の見守り訓練を実施。また、二層協議体の会議へ参加し、住民主体で、地域に何が必要かなど意見を出し合い、地域力向上へ取り組んでいる。
2, 4 まんのう町国保造田歯科診療所 香川県 地域の社会福祉法人のデイサービス・スペースを無償でお借りして、診療所のスタッフや地域のボランティアの方々と一緒に、地域の子どもたち、子育て世代の支援策として、居場所づくりをしている。
3 あがの市民病院 新潟県 病院では、健康寿命日本一を目指す市と協力して、地域包括医療・ケアを充実させる取り組みとして、「自助」に力を入れている。すなわち、ヘルスプロモーション活動として、年8回の糖尿病教室、年数回の地域講演会・出前健康講座、中学校での「たばこの害」・「こわ~い薬物依存」の講演、地域医療フォーラムや病院祭での講演、年10回の新潟大学医学部健康講座塾など、様々な健康情報提供の場を作っている。さらに地域活動として、七夕コンサート、クリスマスコンサート、民謡流し参加などを通して、地域の方々との「ふれあい」「交流」を図っている。
3 三浦市立病院 神奈川県 平成27年に三浦市制60周年記念事業として三浦市民健康大学を開設した。その後、毎年1回三浦市民健康大学オープンキャンパスを開催している。これには地域で働くリハビリのスタッフや医療、介護、健康に関わる多職種の人々が協力して行政・民間一体となり作り上げている。
3 中之郷歯科診療所 滋賀県 ‘8020事業‘として、乳幼児から高齢者までを対象に、こども園、小中学校の歯科教育、歯科指導に携わり、各地区でのサロンで出前講座等を実施している。住民に歯への知識の向上を計り、自ら予防意識を高めることにより、定期受診型の診療へと繋げている。
3, 7 上天草市立上天草総合病院 熊本県 一か月に一回、生活習慣病予防や健康寿命の延伸を目的とした糖尿病教室を地域住民も交えて開いている。
4 東通村診療所 青森県 「第1回さんぽ連×東通そば文殊の森リレーマラソン大会」地域の健康増進を推進する団体(さんぽ連)と東通村診療所がコラボして開催した、診療所敷地内をタスキを回して走るイベント。運動後は地域の名産である東通そばを食べ、地域住民と交流する。
4 国保直営川添診療所 和歌山県 住民に招かれる形で 毎月血圧測定と 高血圧への啓蒙を行っている。
4 上島町魚島国民健康保険診療所 愛媛県 診療所待合室で、健康に関するDVDを流したり、喫茶コーナーをつくって住民が集えるようなスペースとしたりした。
4 国保直営総合病院君津中央病院 千葉県 ①地域住民に向けた「市民講座」の開催。
②リハビリテーション科による地域住民に向けた「きみフェス」の開催。
6 薩摩川内市上甑診療所 鹿児島県 鹿児島大学病院と契約し、月1回眼科医が来島し島民の診察を行なっている。
7 県北西部地医療センター国保白鳥病院 岐阜県 3年間で病院立地旧町内の自治会を回り地域医療懇談会を開催し、総合診療や訪問診療の説明を行った。
7 姫島村国保診療所 大分県 地区の公民館で少人数の住民へ向けて、(地元出身の)歯科衛生士が口腔機能についての講話、指導を行なった。
該当なし 能勢町国民健康保険診療所 大阪府 中高生に対するインターンシップ研修。

6.ありたい姿実現に向けた国保直診の取り組み参考事例③

事例分類項目にもとづいて収集した参考事例を提示する。

【項目③】人材確保・育成に関する具体的事例
1. 人材確保例
 1-1. 人材確保に関する大学との連携事例
 1-2. 人材確保に関する周辺医療機関との連携事例
 1-3. 大学や自治医大派遣に依存しない医師確保例
 1-4. 総合病院での臓器専門科医師確保例
 1-5. 専攻医確保例
 1-6. 医師の定着化例(長期赴任増加例)
 1-7. 医師の地域内居住増加例
 1-8. スタッフ定数制限や賃金規程変更困難への対応例
2. 自院に限らず地域内の関係職種確保例
3. 自院独自プログラムへの登録者増加例
4. スタッフ高齢化(特に医師高齢化)への対応例
5. 人材育成例
6. メディカルスタッフ派遣例
7. 医学教育参画例
8. 地域医療マインド醸成例、スタッフの地域包括ケア理解のための取り組み例、国保直診施設のメリット感醸成例
9. スタッフのキャリア形成支援例
10. 資格や能力のあるスタッフへのインセンティブ付与例
11. プロフェッショナルな事務員育成あるいは確保例
12. マネジメント可能な人材の育成・確保例
13. スタッフのパターン化マンネリ化からの脱却例

小項目 施設 都道府県 取組内容
1-1 あがの市民病院 新潟県 自治体、大学と協力し、脳血管疾患や心疾患の原因となる糖尿病・生活習慣病を予防治療するセンターを2015年10月に設置し、がんの中で多い消化器がんに対応する消化器病センターを2018年4月に設置し、寝たきりの原因となる骨折、フレイルに対応する骨関節疾患センターを2019年4月に設置した。センターでは、常勤医とともに、地元新潟大学からの非常勤医師と協力して、市民における生活習慣病、消化器病、骨関節疾患の発症・進行に関する実態と要因を明らかにし、市民の健康寿命を延ばすための施策立案を、科学的かつ効果的に進めるための研究も行っている。
1-1 国保匝瑳市民病院 千葉県 近隣大学の実習生の受け入れ、近隣大学への奨学金制度や職員採用試験の案内
1-1 薩摩川内市上甑診療所 鹿児島県 鹿児島大学医学部の学生の地域医療実習の受け入れを行なっている。
1-1 大山町国民健康保険大山診療所 鳥取県 地域医療に携わる総合診療医を育成する鳥取大学医学部の教育施設として「家庭医療教育ステーション」を大山診療所に整備した。学生が常勤医の指導を受けながら実際に患者の診察に当たったり、常勤医が地域の健康啓発活動を行ったりして、人材確保に向け取り組んでいる。
1-1 佐井歯科診療所 青森県 歯科医長期休暇の代診対応。診療所に赴任後も医師が大学の医局に所属していることで、代診の派遣が可能であった。医局の教授が歯科医師会や他大学医局などに募り、後任が決定した。
1-1, 1-2 小林市立病院 宮崎県 宮崎大学からクリニカル・クラークシップ(地域包括ケア実習)として医学生を受け入れている。当院での実習の他、近隣医療機関とも連携し、幅広い分野で実習機会を設けている。また、医療だけではなく、行政実習(介護認定審査会への参加、各種健診への参加、保育園実習等)の実施や市民団体と協力し、意見交換会を開催するなど地域一体となった人材育成に取り組んでいる。
1-1, 1-2, 1-3, 5, 7 飛騨市民病院 岐阜県 「神通川プロジェクト」 医師不足の危機を脱するために、医学生から初期研修医、専攻医までの屋根瓦式の教育研修事業を継続している。10年間のうちに医学生は160名以上の実習を受け入れて、初期研修医の地域医療研修は年間40名ほどの受け入れるようになった。少ない常勤医に加えて、年間通して3~4名の初期研修医がいることで医師確保に大いに役立っており、加えて内科・総合診療科・小児科の専攻医も受け入れるようになった。
1-1, 7 久々野診療所、朝日診療所、高根診療所 等 岐阜県 大学と人材育成等に関する覚書を締結し、国保診療所を含む市内医療機関において、医学部1年生に高山市の地域医療を体験していただく早期体験実習を開始した。また、研修医の地域医療研修も南高山エリアの3診療所(久々野、朝日、高根)等で受け入れることにより、それぞれの地域や施設の特徴が横断的に経験できるための仕組みづくりを行っている。
1-2 国民健康保険宇検診療所 鹿児島県 医師が研修等で不在になる場合は、近医医療機関へ医師派遣を依頼している。看護師も2名しかいないため、訪問看護が実施できず近くの町や市の訪問看護ステーションに依頼している状況である。医師確保のため、医学生の実習を積極的に取り入れている。
1-2 府中市立湯が丘病院 広島県 病院の経営が逼迫する中で、地域の限られた人材の雇用を確保することを念頭に、同じ自治体内にある公立病院と地方独立行政法人の病院の間で出向による人事交流を行った。具体的には両者の間で契約を締結し、人材確保の難しい山間地にある公立病院に地方独立行政法人の病院から看護師、医療技術者を派遣するもの。なお、該当職員の異動については、本人の意向等を確認したうえで不利益とならないように配慮した。
1-2 美波町国民健康保険美波病院 徳島県 徳島大学からの常勤医の派遣が難しく、1)徳島赤十字病院、2)阿南医療センター(寄附講座)、3)県立海部病院(海部・那賀モデル(地域の小病院どうしの連携))、4)徳島県医師会などの非常勤医師で、診療を保持している。
1-2, 5, 8 三浦市立病院 神奈川県 地域包括ケアを牽引する地域看護師を地域で確保・育成するために中核病院と中小病院、介護施設、訪問看護などとの間で人事交流を進めている。現在「かながわ地域看護師」養成事業として神奈川県の事業化を目指している。
1-3 国東市民病院 大分県 国東市医学生奨学金貸付制度を設け、当該地域で医師確保に努めている。当該地域での一定期間の勤務の条件をクリアできれば、償還および利息の返還が免除される。現在まで、5名が利用し、内3名が医師となり、当院で現在勤務あるいは近いうちに勤務頂く予定。
1-5 三浦市立病院 神奈川県 神奈川県より医療資源の乏しい地域との認定を受け、かつ総合診療Iの条件を満たす施設となった。そこで、今年より必須である6ヶ月以上の僻地研修として総合診療専攻医の研修を受けることができた。
1, 5 相模原市国民健康保険(青根・内郷・日連)診療所 神奈川県 ①総合的な診療能力を有する医師の育成、確保を図り、医師不足や超高齢社会等に対応した地域医療体制の基盤づくりを進めるため、相模原市内唯一の医師育成機関である北里大学の医学部生に修学資金の貸付を行っている。
②寄附講座「地域総合医療学」を北里大学医学部に開設し、総合診療医の育成及び地域医療に関する研究等を支援している。
③さがみはら看護フェスティバル実行委員会が「看護の日」及び「看護週間」に実施する事業に対し助成している。
④病院に勤務する医師、看護師等の乳幼児を保育する院内保育施設設置者に対し、運営費を助成している。
⑤神奈川県ナースセンター相模原支所の運営に対し助成している。
⑥看護師等養成施設に在学する者に修学資金の貸付を行っている。
⑦相模原看護専門学校の運営に対し助成している。
⑧看護師等の有資格者でありながら看護職に従事していない者(潜在看護師)を対象とした就職相談会や技術研修会の開催等に対し助成している。⑨国保直診施設が立地している地域の通院困難への対応や、医師や看護師を含む医療資源等の効率的な活用を進めるため、市が所管する診療所を再編(統合)して医師2人体制を実現し、在宅医療の充実を図ることを検討している。
2 鏡野町国保上齋原歯科保健センター 岡山県 【専門職を地域でシェア】常勤ではなく非常勤の専門職(歯科衛生士)を教育して、時間給で歯科保健センター事業および歯科診療所業務に従事してもらっている。さらに、近隣病院の言語聴覚士および栄養士と面接し選別して時間給で同事業に従事してもらっている。
3 雲南市立病院 島根県 医師数減少からの経営危機からの改革事例。2010年「地域総合診療科」の創設。県や市町村など行政、周辺医療機関、地域住民と連携し、総合診療専門医などの育成に継続して当たっている。
3, 5, 9, 10 飛騨市民病院 岐阜県 「里山ナース院内認定制度」 地域で求められる看護師像(急性期から慢性期、在宅、看取り、経営など含めた総合的看護力を備えている看護師)を里山ナース(商標登録済)として育成する独自の教育システムを設立した。日本看護協会のクリニカルラダーとリンクしながら3段階にステップアップするものであり年々修了者が増加している。2段階目のステップでは研修費補助金を与えている。院内の看護師が活き活きと働き、そのシステムを知って新人看護師の採用にもつながっている。
5 6診療所(清見、荘川、久々野、朝日、高根、栃尾) 岐阜県 8月に高山市と市内中核病院が地域医療の課題に3者で連携して取り組むという協定を締結した。その大きな柱の一つが人材の育成・確保であり、合同研修会などの取り組みを進めている。
5 加賀市医療センター 石川県 病院が契約するコンサルタント会社指導の下、DPCデータを基に病院の状況や他病院とのベンチマーク分析ができるツールを用い、問題点や改善策を見出す「人財育成プロジェクト」を実施している。様々な職種が参加し、分析から見出した改善案から、収益向上や業務効率化などの成果を上げている。
5 にかほ市国民健康保険小出診療所 秋田県 これまで、高校生のインターンシップの受け入れ、医学生の受け入れ、臨床研修医の受け入れなどを行ってきた。高校生のインターンシップについては昨年受け入れた2人ともに看護学校に入学。今年度から、教育委員会の理解を得て、中学生の職場体験にも参画し、2人の参加があった。現時点では2人とも医療職を目指して勉強しているとのこと。また、にかほ市内の小学校3校において、キャリア教育の一環として、地域医療や総合診療についての授業を開始した。
5 公立南砺中央病院 富山県 病院では、中学生が院内ほとんどの業種を体験できる職業体験(1~5日間)を行っている。また、高校生においては自分が希望する業種でインターンシップの受け入れを行っている。PT及びOTでは幅広い専門職養成校から実習生を受け入れ、当院で実習を行った学生が数名当院の就職試験に挑み、4名が就職に至っている。
5 さぬき市民病院 香川県 医療技術部の職員を対象に、職位に応じた役割の認識向上のための研修を行い、人材育成に取り組んでいる。
5 県北西部地域医療センター国保白鳥病院 岐阜県 小学生を対象とした「わくわく病院探検ツアー」に始まり中高生を対象とした「医療介護系進学セミナー」、県内高校生を対象とした1泊2日の「岐阜県へき地医療研修会」、地元高校と連携し高校側のデュアルエデュケーションシステムとタイアップした高校在学中の「介護職員初任者研修」、医学部看護学部などの学生受け入れ、研修医の地域医療研修受け入れ、総合診療系プログラムの設置、日本最小規模の看護師特定行為研修と小学生から連続的に医療介護人材育成に取り組んでいる。
5, 7 上天草市立上天草総合病院 熊本県 地域医療の実態を学んでもらうために、船を使用して島に渡り診療を行う、鉤針外傷や紅斑熱といった地域特有の症例に触れるなど地域ならではの特色を生かした研修・実習の提供。
カルテの記載方法や内視鏡の扱い方を教えるなど研修を終えた後を見据えた研修プログラム。
6 平川市国民健康保険碇ヶ関診療所 青森県 県の委託を受け、感染管理認定看護師の資格を有する看護師を、コロナウィルスの院内感染が発生した病院や介護施設へ派遣し、感染対策の改善に向けた指導等を実施。
7 あがの市民病院 新潟県 2017年から「初期臨床研修医の教育と成長」を病院運営目標に掲げ、ホームページで広報するとともに、院内改革を実行した。改革により、2015年度から2022年度までの8年間で、初期臨床研修医数は順にゼロ、ゼロから4、15、19、18、22、22人に増加し、研修月数は順にゼロ、ゼロから4、15、23、22、31、34か月に増加した。
7 日光市立国民健康保険栗山診療所 栃木県 大学病院から毎年地域医療実習(CBL)の医学生を受け入れている。そのほか、医学生や若手医師の病院研修を随時受け入れている。
7 美波町国民健康保険美波病院 徳島県 徳島大学医学部5年生の地域医療クリニカルクラークシップや、同3年生の公衆衛生学の社会医学実習を受け入れている。
8 国民健康保険 大間病院 青森県 同地域の小中学生向け職業体験イベント。夏休みの期間を利用し、1日を通して地域医療を体験してもらう。医師だけではなく、多職種の仕事を経験し、病院が地域にとって必要であり、そこで働く楽しさややりがいを感じてもらう。
8 飛騨市民病院 岐阜県 「メディカルハイスクール」 医療系の進学を志す高校生のための研修会であり、飛騨市、高山市との共同事業。シリーズものの講演をはじめ、病院での模擬患者を想定した多職種連携の実際を体験するなどのイベントを開催している。
8, 13 鴨川市立国保病院 千葉県 全職員が参加する院内ワークショップを行い、地域医療マインドを醸成しつつ病院の方向性を検討した。
9 国保一本松病院 愛媛県 嶋本純也副院長は、地域にいながら米国医師資格を持ち、米国大学院で公衆衛生を学んだ。慢性期小規模病院において、総合診療、終末期医療、地域住民との連携に積極的に取り組んでいる。YouTubeで「愛南町に触れる会」などの発信もしている。
該当なし 公立那賀病院 和歌山県 待機脳外科医が自宅に居ながら、救急搬送された患者のオンラインデータ診療ができる。
該当なし 南高山地域医療センター(久々野・朝日・高根診療所) 岐阜県 市と県内の大学との医療人材教育に関する連携協定、市内病院と市との医療・教育に関する連携協定、地元看護学校の看護実習受け入れ、医療系を目指す高校生への診療所紹介・医療人との交流、これら医療人材の教育を通じて人材確保も目指す。

6.ありたい姿実現に向けた国保直診の取り組み参考事例④

事例分類項目にもとづいて収集した参考事例を提示する。

【項目④】施設運営に関する具体的事例
1. 多職種のかかわり事例、終末期・看取り時など
2. 総合診療取り組み例
3. 在宅療養支援例、移動時間が長く非効率であることへの対応例、診療報酬上の機能効果加算の要件クリア例
4. マルチモビディティへの取り組み例
5. 地域リハビリテーション取り組み例
6. 救急体制維持例
7. 接遇改善例
8. 医療DX 導入による業務効率化例
 8-1. DX 導入例
 8-2. DX 導入・維持費用への対応例
9. 情報発信におけるICT 利用例
10. スタッフが生き生きと働くための取り組み例
 10-1. スタッフの疲弊への対応例
 10-2. スタッフのことなかれ主義蔓延への対応例
11. 小規模多機能病院例
12. 施設形態を変えながら地域包括医療・ケアの取り組み例
 12-1. 取り組み手順明確化例
 12-2. 整理・縮小・機能選択例(そのタイミングも含めて)
 12-3. 地域医療構想4 区分への適切対応例(診療報酬上の不利益への不安解消例)
 12-4. 周囲の代替医療機関がない中での整理・縮小例
13. 財政的課題の中での施設設備更新や診療機器購入・更新例
14. 院内新規事業に関する院内スペース確保への対応例
15. 働き方改革への対応例(小スタッフでの宿日直・休憩への対応例)

小項目 施設 都道府県 取組内容
1 北広島町雄鹿原診療所 広島県 無床診療所ではあるが、ケアマネジャー、介護施設などと協力して在宅、施設での見取りを積極的に行なっている。
1 公立藤田総合病院 福島県 当院附属施設はなし、近隣協力施設と連携し、施設看取り体制を整備構築、倫理ならびに手技向上を目的に院内研修や協議と連絡会を通してコミュニケーションを図り、体制と方法を共有している。
4 芦屋中央病院 福岡県 路面バス(北九州市営バス)に加え、町内のタウンバス(芦屋タウンバス)および福祉バス(芦屋町巡回バス)の3種のバスが病院に乗り入れをしている。
4 国保匝瑳市民病院 千葉県 有資格者について、就労時間や就労日数を考慮したうえで70歳までを限度に就労可能としている。
5 公立南砺中央病院 富山県 近隣病院及び施設(特別養護老人ホーム)へのリハビリ専門職(PT・ST)の派遣を行っている。派遣先の病院・施設で専門職種によるアセスメント及びプログラムの立案や職員への知識・技術の伝達を行っている。また、派遣先の病院・施設において研修会を開催している。派遣先の病院・施設の機能や現状を当院スタッフが理解することで、転院先で継続して取り組むことができるリハビリプログラムを提供することができる。
5 小林市立病院 宮崎県 短期集中予防サービス事業所C事業受託事業所で理学療法士や作業療法士が常駐していない事業所へ専門的支援を行うことにより、利用者の身体機能改善を促進し、生活機能の自立度を高めることを目的として、小林市と地域リハビリテーション活動支援業務を締結している。
5 さぬき市民病院 香川県 ・元々、国の事業であったものを地区2市が費用負担し継続している。
・「地域の匠を育てる」をスローガンに介護事業所スタッフ向けの講習を行っている。
・内容は、運動、嚥下、口腔、栄養の4分野について、26事業所へ出前講習、年1回集合研修を企画し、地区医師会、看護協会、介護関係団体が協議会メンバーとなっている。
・コロナ禍において、この2年間はオンラインでも実施。
7 あがの市民病院 新潟県 行政と連携し、寄贈された絵画を院内廊下に展示し、定期的に入れ替えを行い、受診者・利用者の方々の「癒し」となっている。ボランティアを受け入れ、毎週水曜8時30分から9時まで、ピアノ生演奏を行っている。
8 鏡野町国保上齋原歯科保健センター 岡山県 【テレビ電話で保健指導】主に歯科衛生士が在宅または介護福祉施設と繋いで介護スタッフ教育および利用者の食事観察(ミールラウンド)口腔ケア指導を行っている。
10-1 志摩市立国民健康保険浜島診療所 三重県 随時スタッフへ聞き取りを行い、問題点の抽出・改善を行い、疲弊しない様に対応している。
10-1, 15 上天草市立上天草総合病院 熊本県 勤怠システムの適正な打刻とシステムの差異の是正、有給休暇取得状況の公表などの働き方・休み方の改善、働きやすい環境確保のため環境整備の一環で行う各部署の入職5年目までのスタッフ同士のコミュニケーション会議、ハラスメントの外部の専門家による窓口相談の設置。
12-2 にかほ市国民健康保険小出診療所・院内診療所 秋田県 2か所の国民健康保険診療所を1ヶ所に統合した。乗用車を利用できない通院手段を持たない市民の移動手段として、コミュニティバス診療時間に合わせて、運行。バス停を診療所の駐車場内に確保した。予約システムも導入し、バスの運行に合わせて、診療が終了できるよう工夫している。
12 志摩市立国民健康保険浜島診療所 三重県 診療所での外来対応・訪問診療対応のほかに、みなし事業にて訪問リハビリを行い、幅広く地域住民のケアを行っている。来年からは、更にみなし事業にて訪問看護を開始する予定である。
12 県北西部地域医療センター国保白鳥病院 岐阜県 60床の一般病床と4床の結核病床で運営されていたが、60床を段階的に地域包括ケア病床とし、46床に減床の上全病床を地域包括ケア病床とする地域包括ケア病院化を行った。なお結核病床4床も廃止した。このプロセスによりポストアキュート、サブアキュート、在宅支援を運営中心とすることが明確化された。
13 府中市立湯が丘病院 広島県 建築後50年を経過した施設の更新に取り組んでいる。今まで更新業務が停滞し、施設設備の更新が緊急に迫られたなかで、基本構想と基本設計を一体とした2年間の事業として、経営分析と設計業務が可能な共同企業体に委託したものである。このことにより、事業期間の短縮、委託経費削減(経営強化プラン同時策定)を目指すとともに、経営と設計の緊密な連携を図りながら、病院の更新に取り組んでいる。(事業期間は延長の可能性あり。)
14 国保匝瑳市民病院 千葉県 発熱患者の対応に当たり従来の感染症用診察室、待合室、前室を改装、室内トイレや検体採取スペースを新設した。
15 日光市立国民健康保険栗山診療所 栃木県 従来、時間外電話対応は診療所職員4名が交代で行っていたが、無報酬であり職員の負担が大きかった。人員の少なさや患者の少なさといった実情に見合うように、時間外対応加算を引き下げ、時間外専用携帯電話を設け医師が持つようにした。医師負担が大きくならないよう、緊急時の対応方法について健康教室や広報で周知し、不要不急の電話を減らすよう努力した。
15 府中市立湯が丘病院 広島県 医師の働き改革の実現に向けて、宿日直許可の更新を行った。県の医療勤務環境改善支援センターの医療労務管理アドバイザーの指導を受け、現状の把握を行って必要書類を作成した。同時に看護師宿直許可についても、新たに更新した。なお、現状では事務職員の宿日直許可申請も必要であるが、事務職員の宿日直については業者に委託する予定である。

6.ありたい姿実現に向けた国保直診の取り組み参考事例⑤

事例分類項目にもとづいて収集した参考事例を提示する。

【項目⑤】経営に関する具体的事例
1. 経営効率化例
2. 患者減への対応例、病床稼働率低下への対応例
3. 医業収支悪化への対応例
4. 人件費率上昇への対応例
5. 住民サービスと報酬とのバランス対応例(住民サービスが報酬に直結しない場合の対応例)

小項目 施設 都道府県 取組内容
1 あがの市民病院 新潟県 療養病床を介護医療院に転換し、病床を200床未満とすることにより、外来診療点数をアップさせ、地域包括ケア病棟入院料をアップさせることができ、経営が改善した。
1 あがの市民病院 新潟県 当院は、公設民営病院である。行政と運営団体が、毎月、外来・病棟入院・救急・健診センター・在宅医療等の状況を話し合い、知恵を出し合い、運営している。
1 市川三郷町営国民健康保険診療所 山梨県 経営効率化のために、令和3年度までは毎日違う医師が診察を行っていたが、令和4年度より常勤に近い形で診察を行った。
1 県北西部地域医療センター国保白鳥病院 岐阜県 1病棟46床で運営しているが、全病床を地域包括ケア病床としいわゆる地域包括ケア病院化を行うことで入院単価の増加が得られた。
1, 2 国保直営総合病院君津中央病院 千葉県 ①委員会で手術室運用を把握し、効率化を図るため手術枠の見直し等検討している
②部会で病棟運用を把握し、病床利用の効率化を図るため病床再編等検討している
③患者総合支援センターの開設により、地域との連携を強化し、新規患者の獲得に努めている
3 飯能市国民健康保険南高麗診療所 埼玉県 地元公民館だよりへの記事の掲載や、診察時に医師が直接声掛けを行うなどして、特定健診受診者の増を図っている。検査結果は医師が直接説明し、再検査や治療につなげられるようにしている。
3 にかほ市国民健康保険小出診療所 秋田県 総合診療専攻医の受け入れにあたって、会計年度任用職員としての予算が確保できないことに対し、にかほ市ではフルナビクラウドファンディングを利用し、今後の地域医療に対しての基金を作り、そこから専攻医などの人件費、医療器材の購入・更新を行う取り組みを開始した。目標を大幅に上回る反応をいただくことが出来ている。
3 志摩市立国民健康保険浜島診療所 三重県 今年10月から、患者様の待ち時間短縮を目的として、外来診療の予約を取り始めた。それにより、患者様が安定して受診していただけるようになった。また、計画的に検査なども対応ができる様になり、収支改善に繋がっている。
3, 5 中津川市国保蛭川診療所歯科 岐阜県 ①開業医に近い視点でのホスピタリティ充実:患者の緊張を和らげる音楽、常に医療者視点ではなく患者目線で接する。患者数や収入を減らさない工夫の上で、極力新しい設備を取り入れる。②治療困難事例(CS患者、歯科恐怖症、障がいや認知症のある方)に対し、経営バランスを少し超えたラインまで時間的にも人員的にも割いて、極力対応する。

7. 策定経過および国保直診ありたい姿検討プロジェクト関係者一覧

策定過程 
スタートアップチーム
第1回2022.11.08 オンライン
第2回2022.12.19 オンライン 
  ※役割完了しコアチームに移行
コアチーム
第1回2023.01.27 オンライン
第2回2023.04.18 オンライン
第3回2023.07.06 オンライン 
第4回2023.09.27 オンライン
第5回2023.11.20 オンライン
全体会 
第1回2023.04.27 オンライン
講演 「国保直診のありたい姿プロジェクト」
小野剛先生(国診協会長/市立大森病院院長)
講演 「日本の医療制度と政策:少子高齢化人口減少時代で向かう方向性を読 み解く」
島崎謙治先生(国際医療福祉大学大学院教授/国診協参与)
・  第2回2023.06.16 オンライン
講演 「医療DXについて」
 厚生労働省医政局
講演 「ビッグデータから解析する国保直診」
松田晋哉先生(産業医科大学医学部・公衆衛生学教授)
第3回2023.10.05 参集 開催地:福井県
検討チーム(4チーム)
>> 診療所チーム
第1回2023.02.24 オンライン
第2回2023.06.05 オンライン
第3回2023.08.10 オンライン
第4回2023.10.17 オンライン
>> 歯科診療所チーム
第1回2023.03.14 オンライン
第2回2023.06.05 オンライン
第3回2023.08.02 オンライン
第4回2023.08.24 オンライン
>> 小規模病院チーム
第1回2023.03.01 オンライン
第2回2023.06.08 オンライン
第3回2023.08.03 オンライン
>> 中規模・大規模病院チーム
第1回2023.03.30 オンライン
第2回2023.06.12 オンライン
第3回2023.07.25 オンライン
第4回2023.09.26 オンライン
   
  ※その他、各チームともメーリングリストで検討実施
   
プロジェクト関係者一覧(*1…チームリーダー *2…サブリーダー *3…担当副会長)
スタートアップチーム
*1  後藤 忠雄(総務企画委員会委員長)
*2  三枝 智宏(調査研究委員会委員長)
  中津 守人(広報情報委員会委員)
  和田 智子(診療所委員会委員長)
  三上 隆浩(調査研究委員会副委員長)
  田辺 大起(調査研究委員会委員・リハビリテーション部会副部会長)
   
コアチーム
*1  後藤 忠雄(「国保直診ありたい姿プロジェクト」統括/総務企画委員会委員長)
*2  三枝 智宏(小規模病院チームリーダー/調査研究委員会委員長)
  中津 守人(中規模・大規模病院チームリーダー/広報情報委員会委員)
  佐藤 幸浩(中規模・大規模病院チームサブリーダー/調査研究委員会委員)
  三上 隆浩(小規模病院チームサブリーダー/調査研究委員会副委員長)
  田辺 大起(小規模病院チームメンバー/調査研究委員会委員・リハビリテーション部会副部会長)
  和田 智子(診療所チームリーダー/診療所委員会委員長)
  武田 以知郎(診療所チームサブリーダー/診療所委員会委員)
  澤田 弘一(歯科診療所チームリーダー/歯科保健委員会副委員長)
  石塚 育子(歯科診療所チームサブリーダー)
   
検討チーム(4チーム)
>> 統括 

後藤 忠雄(岐阜県:県北西部地域医療センター長兼国保白鳥病院長)
   
>> 診療所チーム 
*1  和田 智子(秋田県:にかほ市国民健康保険小出診療所長)
*2  武田 以知郎(奈良県:明日香村国民健康保険診療所長)
  今江 章宏(北海道:寿都町立寿都診療所長)
  廣瀬 英生(岐阜県:県北西部地域医療センター副センター長兼国保白鳥病院副院長兼国保小那比診療所長)
  高原 文香(岐阜県:高山市国民健康保険高根診療所看護師)
  宇佐美 哲郎(大阪府:能勢町国民健康保険診療所長)
  東條 環樹(広島県:北広島町雄鹿原診療所長)
  松原 裕美(大分県:姫島村国民健康保険診療所看護師)
*3  中村 伸一(福井県:おおい町国民健康保険名田庄診療所長)
   
>> 歯科診療所チーム
*1  澤田 弘一(岡山県:鏡野町国民健康保険上齋原歯科診療所長)
*2  石塚 育子(青森県:一部事務組合下北医療センター佐井歯科診療所歯科 衛生士)
  高橋 通則(岩手県:金ヶ崎町国民健康保険金ヶ崎歯科診療所長)
  樋田 貴文(岐阜県:中津川市国民健康保険蛭川診療所(歯科)歯科医師)
  川瀬 千佳(滋賀県:長浜市中之郷歯科診療所歯科衛生士)
  井上 絢香(広島県:尾道市北部地域包括支援センター保健師)
  渡邊 啓次朗(大分県:姫島村国民健康保険診療所(歯科)歯科医師)
*3 海保  隆(千葉県:国保直営総合病院君津中央病院長)
   
>> 小規模病院チーム
*1  三枝 智宏(静岡県:浜松市国民健康保険佐久間病院長)
*2  三上 隆浩(島根県:飯南町立飯南病院副院長)
  小林 晴美(北海道:足寄町国民健康保険病院看護師長)
  松岡 保史(青森県:三戸町国民健康保険三戸中央病院副院長)
  齊藤 稔哲(宮城県:気仙沼市立本吉病院院長)
  内田  望(埼玉県:国民健康保険町立小鹿野中央病院長)
  小橋 孝介(千葉県:鴨川市立国保病院長)
  田辺 大起(鳥取県:日南町国民健康保険日南病院リハビリテーション科長)
  松木 克之(愛媛県:国民健康保険久万高原町立病院長)
*3  大原 昌樹(香川県:綾川町国民健康保険陶病院長)
   
>> 中規模・大規模病院チーム 
*1  中津 守人(香川県:三豊総合病院副院長)
*2  佐藤 幸浩(富山県:かみいち総合病院副院長)
  及川 友好(福島県:南相馬市立総合病院長)
  藤森 勝也(新潟県:あがの市民病院長)
  小澤 幸弘(神奈川県:三浦市立病院総病院長)
  柴田 里枝(富山県:公立南砺中央病院リハビリテーション室長代理)
  大谷  順(島根県:雲南市立病院病院事業管理者)
  占部 秀徳(広島県:尾道市 公立みつぎ総合病院診療部長)
  安部 美保(大分県:国東市民病院訪問看護ステーション管理者)
*3  海保  隆(千葉県:国保直営総合病院君津中央病院長)
   
   
 

8-1.国保直診を取り巻く機会や脅威

 様々な社会情勢が、国保直診の運営に影響を与えることが考えられる。その一覧を以下に提示する。国保直診運営に当たり、各地域の状況に応じて提示した要因を自施設の強みや弱みと照らし合わせて、「機会をとらえて強みを強化 あるいは 強みを生かして機会をとらえる」、「弱みを改善して機会に挑戦 あるいは 世網によって機会を逃さない」、「強みを生かして脅威を回避 あるいは 脅威を回避するために強みを強化」、「弱みによる最悪の事態の回避 あるいは 弱みを理解し驚異の影響を最小限に」といった検討を行う際の参考となれば幸いである。

項目 機会としてとらえると 脅威としてとらえると
地域包括医療・ケアの社会での理解と浸透 ・国診協の取り組みが社会で認知される
地域包括医療・ケアの社会での理解と浸透 ・国診協の取り組みが社会で認知される
少子高齢化人口減少 ・過疎地域への地域再興への動きに特に若者の流入の可能性が生じこれが地域包括医療
・ケアとリンクする可能性がある
・地域医療の再編に向けた機会創出・民間医療機関の縮小・撤退への対応が可能になる
・医療ニーズの減少に伴う経営悪化や医療機関規模縮小
・退院支援の複雑化・困難化
・スタッフの高齢化、スタッフの確保難
・マネジメントや教育といった分野での人材不足
・スタッフ一人当たりの業務量増に伴う離職リスク
・少子化対策が(子どもがいない地域において)高齢者医療福祉予算削減につながる可能性
・物理的距離増大に伴い地域政策課題において移動手段
・購買手段の確立の優先順位が地域包括医療・ケアより上昇
多死社会の訪れ ・在宅あるいは施設看取りの増加
がん終末期患者増 ・積極的治療より地元医療機関での入院
・外来・在宅医療の需要増加
・地域の保健医療福祉の連携の強みを生かした存在意義の提示
・何でも相談できる医療機関、医療介護連携のハブとなる医療機関としての存在増
高齢者の家族代替機能が不透明 ・地域包括医療・ケアの文脈の中での支えが可能
・地域の保健医療福祉の連携の強みを生かした存在意義の提示
・何でも相談できる医療機関、医療介護連携のハブとなる医療機関としての存在増
・退院支援の複雑化・困難化
・遠距離介護対応能力の不足・脆弱(遠方子世代の親呼び寄せに伴う地域の人口減加速)
独居高齢者増 ・積極的治療より地元医療機関での入院・外来・在宅医療の需要増加
・地域の保健医療福祉の連携の強みを生かした存在意義の提示
・何でも相談できる医療機関、医療介護連携のハブとなる医療機関としての存在増
・退院支援の複雑化・困難化
超高齢者増 ・積極的治療より地元医療機関での入院・外来・在宅医療の需要増加
・地域の保健医療福祉の連携の強みを生かした存在意義の提示
・何でも相談できる医療機関、医療介護連携のハブとなる医療機関としての存在増
世界的な少子高齢化 ・外国人労働者確保の期待薄
地域医療構想 ・高度急性期・急性期病院の退院圧力が増加し、回復期・在宅機能の需要増
医師偏在対策 ・医療提供体制継続に対する国保直診のノウハウ利用機会の増加
・都道府県単位の医師偏在対策の一つとしている地域医療従事医師確保への政策的議論活発化
・大学など人材育成機関との関係が希薄な地域や施設の存在
地域医療教育重視の傾向 ・地域への若手医師の親和性向上
総合診療医への関心と認知の微増 ・総合診療医の実践の場の提供が可能
かかりつけ医機能への関心増 ・身近な医療機関への受診増加の可能性
若手の志向性や働き方に関する意識 ・若手医師・若手歯科医師の専門医・専門分野志向による地域勤務回避の傾向
・若手のスマートな勤務への欲求・若手のワークライフバランスの意識向上
働き方改革 ・労働環境改善に伴う離職防止 ・応援医師・派遣医師の確保・継続難
・若手のスマートな勤務への欲求
・若手のワークライフバランスの意識向上
新興感染症 ・行政との連携の下での公立医療機関の役割、存在意義の再認識
歯科関係者内での医科歯科連携、他職種連携への期待 ・保険上の担保
・連携重要性の認識向上
・介護施設など幅広い連携の機会創出
・施設間の意識差
口腔機能などの健康影響の学問的明確化 ・歯科分野での特に保健分野への取組への期待 ・Updateのための継続的研修機会確保要
医療DX ・人材不足地域における業務の効率化、医学誌式・技術習得における地域間格差縮小 ・高齢者の受け入れ能力不十分
・導入コスト高
・サイバー攻撃リスク
自治体機能の脆弱化 ・人材不足
・補助金・繰入金などの減額への懸念
自治体間の関係性 ・自治体枠を超える連携における自治体間の思惑の差異
合併の長期的影響 ・地域資源量増加
・自治体間調整の困難さ軽減
・物理的距離増大


8-2.国保直診自体の持つ課題

 多様な施設形態にもかかわらず共通して以下に提示するような運営課題に国保直診は直面している。その取り組み例については「6. ありたい姿の実現に向けての取り組み参考事例」の項目を参照されたい。

スタッフ不足、確保困難に関する課題
  医師確保困難
  大学医局依存性高い(医局の方針転換への対応難)
  自治医大派遣医師依存性高い
  総合病院であっても専門家がそろわない
  初期研修医希望有、専攻医希望少ない、独自プログラムへの応募少ない
  医師の高齢化
  長期赴任医師少ない
  職員の地域外居住:福利厚生上の課題や地域そのものの理解不足の助長リスク
  医療機関のみならず、地域の関係職種全体の不足
  行政の職員定数や賃金規定の壁あり(雇用したくてもできない)
運営に関する課題
  変化を前提とした取組み手順不明確
  病診・病病連携不十分
  地域リハビリテーション構築不十分
  歯科医療資源乏しい
  救急体制の維持
  地域医療構想の4区分に当てはめにくい→診療報酬上不利益の可能性
  財政的課題から施設更新や診療機器の購入・更新困難
  周辺医療介護施設の縮小撤退に伴う負担増
  働き方改革への対応:スタッフが少ない中での日当直・休憩への対応
  住民の専門医志向、総合診療や地域包括ケアへの関心・理解不足
  交流拠点となれない
  高齢者対策と少子化対策のバランス
  政治的配慮の必要性、行政の理解が希薄な面もあり
  首長交代時の方針転換対応
  民間病院内の課題がダイレクトに地域医療課題となりうる→民間病院が最終防御ライン
  新規事業に関するスペース不足
  広域連携による土地勘のない地域へのサポート
  周囲に代替医療機関がない中での整理・縮小手順不明
  人口減等の社会背景を考慮した中での整理・縮小・機能選択、そのタイミング不明
経営に関する課題
  人口減・患者減
  病床稼働率低下
  医業収支悪化
  人件費率上昇
  経営改善プレッシャーの中での医療提供、スタッフの疲弊、ことなかれ主義蔓延
  住民サービスとのバランス
スタッフ教育における課題
  キャリア形成支援不十分
  資格や能力ある職員へのインセンティブ不可
  プロフェッショナルな事務職員の育成困難(異動あるため)
  マネジメント人材不足
  接遇改善
  職員の地域包括ケアの理解不十分
  国保直診施設のメリット感希薄
  パターン化・マンネリ化
  経営改善プレッシャーの中での医療提供、スタッフの疲弊、ことなかれ主義蔓延
在宅医療における課題
  移動時間が長く非効率
  機能強化などの要件クリア困難
  DX対応 費用やその方法
1.はじめに

1.はじめに

 国保診療施設(以下「国保直診」という。)は地域住民が住み慣れた地域でその人らしい生活を継続し、必要な医療と介護を安心して受けられる「地域包括医療・ケア」を支える地域密着型施設として大きな役割を果たしている。しかし国保直診の多くは人口減と少子高齢化が進む離島・へき地・中山間地域に立地していることもあり施設運営は極めて厳しい状況にある。加えて、厚生労働省は「地域医療構想」の推進を図るため2019年に、ダウンサイジングや機能連携・分化を含む再編統合の再検証検討医療機関を公表したが、その中には多くの国保病院が含まれ、今後各地域で地域医療構想実現に向けての協議が再開される中で国保病院を含めた医療提供体制のあり方が議論されることになる。こうした社会情勢の変化は、病院施設に限定されたものではなく、外来機能やかかりつけ医機能の議論も開始されていることもあって、国保直診として自施設の立ち位置を明確にすることが必要である。  全国国民健康保険診療施設協議会(以下「国診協」という。)では、令和2年度老人保健健康増進等事業で「離島・中山間地域における「地域医療構想」の実現と、それと連動する「地域包括ケア」の継続・深化による「まちづくり」に向けた調査研究事業」を実施し、国保直診の役割、再編統合による影響、地域包括ケアシステム取り組みの課題、医師や職員の確保と育成、国保直診管理者の継承等について検討した結果、今後の国保直診の運営を持続していく上で、
  
① 地域包括医療・ケアを継続・深化させるような医療分野への取り組みの必要性 
医療・介護連携、地域住民の啓発や住民活動等の支援、自治体の医療介護関連施策の策定支援や人材育成支援等への取り組み 
地域の状況に応じてその地域においてあるべき姿を目指し必要に応じて組織改変や運営形態の変更を検討するような取り組み
② 地域包括医療・ケアにかかる価値観や想いを共有できる人材の確保・育成の必要性 
承継者候補を増やすための取り組み
医師以外の職員の確保・育成に関する取り組み
職員入職後の教育環境への取り組み
③ 地域住民が地域包括医療・ケアに主体的に参加できる取り組みの必要性
住民が自ら、自分や家族等の予防や健康、地域の医療や介護等の現状についての認識を高めるとともに、自治体による普及啓発や住民活動等の支援に向けた取り組み
自治会の集会や拠点となる居場所等での普及啓発の機会充実のための移動手段の確保や支援の取り組み
普及啓発の大きな力となるボランティアやサポーターの確保・養成支援の取り組み
④ 国保直診等の公的医療機関と自治体がともに地域包括ケアシステムの中核を担う必要性

「1地域1施設」というような限定されたコミュニティにおいては、自治体が国保直診等による地域住民の生活支援まで見据えた医療を可能な限りの質と安全性を維持しつつ継続されるよう支援

「1地域多施設」というコミュニティにおいては、自治体が地域におけるそれぞれの施設の強みや役割を明確にしたうえで、自治体の中に地域包括ケアシステムの中核を担うべき地域全体と未来を見通す力を備えたコーディネーターを育成

 といった課題を抽出することができた。国診協が、これらの課題への対応方法を可能な範囲で提示し、近未来の「国保直診のありたい姿」を描くことは多くの国保直診において持続可能な運営基盤の構築に寄与するものと考える。
 以上の観点から、国診協にとってその会員施設である国保直診の運営上の課題を整理して対応策を提示することは喫緊の検討事項であり、プロジェクトチームを立ち上げ、外部有識者の意見も聞きながら検討を重ねるとともに「国保直診のありたい姿」を描くための提言を本報告書としてまとめる。
2.背景

2.背景

 国保直診は地域包括医療・ケア(後述)を旗印として活動している。その理念を実現するために、多くの地域特に中山間地域や島嶼部を中心に、多くの先人たちが強いリーダシップを発揮し国保直診を中心に地域包括医療・ケアを展開するモデルを構築してきた。国保直診は、地方自治体が住民の福祉を増進するつまり医療の提供を行う目的で設置する「公の施設」(地方自治法第244条)という立場と、地方自治体が健康教育、健康相談及び健康診査並びに健康管理及び疾病の予防に係る被保険者の自助努力についての支援その他の被保険者の健康の保持増進のために必要な事業あるいは被保険者の療養環境の向上のために必要な事業といった保健介護福祉分野も含んだ事業展開を行う施設(国民健康保険法第82条)、更にはこうした施設が地域における住民のQOLを向上させるため保健・医療の連携及び統合を図る地域包括ケアシステムの拠点としての役割を担うことができることから地方自治体は当該施設との連携を図った保健事業実施に努める(平成16年7月30日厚生労働省告示第307号国民健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針)という立場をもち、このために医療施設に保健福祉介護関連施設を併設し一体化する包括モデルをその運営の基本的モデルと位置付けてきた。
 しかしながら国保直診を取り巻く環境は大きく変化してきている。医師の臨床研修制度などによるキャリア形成の変化に伴う医師不足、医師のみならず看護師を始めとする医療・介護人材不足、医療の急速な高度専門分化による非コモディティ化、自治体の合併、合併前後より顕著化してきた人口減少・少子高齢化などがみられる。特に人口減少・少子高齢化は今後も不可避の状況であるとともに、国保直診が立地する中山間地域・離島でより著明であり、この人口減少・少子高齢化による医療需要の低下、更に支える側の減少は国保直診の運営に大きな影響を与えている。これらに加え、「地域医療構想」「働き方改革」「医師偏在対策」が推進され、これらに対する対応も求められている。
 今まで経験したことがない社会背景の変化に対し、ただただ施設運営に傾注するだけではなく、国保直診が社会に対しどういった姿で貢献していくか、その「ありたい姿」を提示することがいま求められている。
3.地域包括医療・ケアとは

3.地域包括医療・ケアとは

 「地域包括医療・ケア」は全国の国保直診運営の「基本理念」として国診協において定められたもので、次のように定義されている。


地域に包括ケアを、社会的要因を配慮しつつ継続して実践し、住民(高齢者)が住みなれた場所で、安心して一生その人らしい自立した生活が出来るように、そのQOLの向上をめざすしくみ

包括医療・ケアとは、治療(キュア)のみならず保健サービス(健康づくり)、在宅ケア、リハビリテーション、福祉・介護サービスのすべてを包含するもので、多職種連携、施設ケアと在宅ケアとの連携及び住民参加のもとに、地域ぐるみの生活・ノーマライゼーションを視野にいれた全人的医療・ケア
換言すれば保健(予防)・医療・介護・福祉と生活の連携(システム)である
地域とは単なるAreaではなくCommunityを指す

 また、この理念実現のため国診協は活動指針として「国保直診ヒューマンプラン」を以下のように策定している。

 国保直診は、地域における他の保健・医療・介護・福祉の資源との連携、協力のもとに、その中核(拠点)となって、「地域包括医療・ケア」の理念に基づき全人的医療を提供することを目的として活動、その活動指針は
1.  国保直診は、当該地域の地理的、社会的条件並びに診療圏域内の他の医療機関の配置状況に応じ、地域住民のニーズにあった全人的医療の提供を行う
2. 国保直診は、超高齢社会における保健・医療・介護・福祉の連携、統合を図る地域包括ケアシステムの拠点としての役割機能を持つ
3.
国保直診は、既存の保健福祉施設との機能連携を図るとともに、国保総合保健施設を設置し、あるいは、地域包括支援センター、在宅介護支援センター、訪問看護ステーション、介護老人保健施設などの保健福祉施設を積極的に併設していく

 こうした基本理念をもとに国保直診、設置自治体、その住民が協働して地域包括医療・ケアに取り組んできたなか、厚生労働省においても高齢化が進む我が国において「要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現」することが重要とされ、そのシステムの構築を推進することとなり、各自治体がその地域の特性に応じて取り組みを開始している。地域包括ケアシステムの原点は国診協の提唱し、その中心理念と位置付けてきた「地域包括医療・ケアシステム」である。
4.提言

4.提言

 国診協会員施設の特徴は、その多様性、つまり大規模・中規模病院から小規模病院、有床・無床診療所、病院歯科、歯科診療所まで多様な形態の施設があることである。したがって、国保直診全体としてのありたい姿とともに、今回の「ありたい姿」を検討するにあたり設定した、診療所、歯科診療所、小規模病院(100床未満)、中規模・大規模病院(100床以上)の4分野のありたい姿を提言する。
4-1.国保直診のありたい姿
 私たち国保直診は、人口減少・少子超高齢社会の中で、住民と地域、行政、医療介護福祉施設、および全スタッフをパートナーとして、国保直診の基本理念である「地域包括医療・ケア」の実践を大切に、将来にむけて紡いでいき、地域社会の様々な変化に適切に対応しながら、住民のいのちと暮らし、そして尊厳を守り、その地域とともにあり続けていきます。
4-2.国保直診 診療所のありたい姿
全体総括
 国保直診診療所は、人口減少・少子超高齢社会の中で、たとえ地域が置かれた環境がどのようになろうとも診療所の形態をフレキシブルに変化させ、地域包括医療・ケアを届けるという姿でありたいと考えています。
ありたい姿の具体的内容
●ご本人とご家族の希望をかなえられる多様な地域包括医療・ケアを届けます。

地域住民にとって最も身近でかかりやすい医療機関として、限られた医療資源を最大限活用し、近隣の病院や専門医とも連携しながら、子どもからお年寄りまであらゆる健康問題に対して責任を持って継続的に対応します。

人生の最終章の場が、病院や施設、家など、どのような場所であろうとも、同居・近隣あるいは遠方の家族も安心でき、少しでも悔いがない終い方ができるよう、ご本人の希望に沿った形になるよう多職種でかかわり、医療・ケアを届けます。

住み慣れた地域でその人らしく生き生きと過ごすことができるように、住民や多職種、行政とも協働し、医療を提供する場としてだけではなく、予防から介護・福祉にまで、幅広い視点をもって対応に当たります。
かかりつけ医機能#、在宅医療、人生会議#、看取り、多職種連携
   
健康問題を起点に地域社会の課題を多方面と共有できる関係を作ります。
健康問題のみならず、生活・社会など身近な問題など、なんでも気軽に相談でき、困りごとは、各分野につなげられるよう努めます。
コミュニティを見つめ、地域の人と人とのつながりを大切にし、地域の課題抽出にとどまらず逆に強みも見出だし、行政とも連携し、コミュニティ機能を維持・発展できるよう努めます。
地域住民とともに病気や診療所のこと、地域について学び、この地域でどう暮らしていきたいか、どういう地域になったら幸せかを考え、活動する機会を作ります。
地域ケア会議#、健康教室、カフェ・サロン活動、交通手段の確保、生活支援、感染症対策、災害対策

持続可能な地域包括医療・ケアを提供するため、人材確保・育成に取り組みながら、地域社会の変化に対応していきます。
地域で働く医療従事者を確保するため、現有スタッフのスキルアップや地域で働き続けられるような環境づくりに取り組みます。
地域を診ることができる総合的な医療従事者を、教育機関や周辺の医療機関とも連携し、地域とともに育てます。
診療所の機能強化・病診連携のためにICT#ツールを活用します。
地域の置かれた状況に応じて、診療所の形態を多様に変化させながらも、継続的に地域医療・ケアを提供し続けます。

教育機関や周辺の医療機関との連携、自治医大、地域枠#、特定ケア看護師#、広報PR活動、働き方改革、研修機会の確保、多職種学生・研修医の受け入れ、総合診療専門研修制度、地域医療の次世代を担う後継者の育成、オンライン診療#、退院前カンファレンス、パーソナル・ヘルス・レコード#、グループ化、ネットワーク化、指定管理者制度#、地域医療連携推進法人#、有床診療所の無床化、経営ノウハウの共有化
 
4-3.国保直診 歯科診療所のありたい姿
全体総括
 国保直診歯科診療所は、人口減少・少子超高齢社会の中で、口腔を通して人や地域を総合的に診ることで、健康寿命の延伸を目指すとともに、地域住民に寄り添い、自らもそこに生きがいを感じながら、地域包括医療・ケアを実践し続ける医療施設でありたいと考えています。
ありたい姿の具体的内容
誰一人取り残さず、全ての住民の信頼にこたえて、全てのライフステージに適した取り組みをします。
口腔に関する保健・医療・介護・福祉・生活(セルフケアの支援)に関わり、全身の健康に寄与し、健康寿命の延伸・健康長寿に貢献します。
妊産婦期および乳幼児期から終末期まで継続的に関わり続けます。
保健活動や医療・介護につながっていない住民も対象とします。
「オーラルフレイル#」の予防・啓発によって、フレイル・介護予防に務めます。
低年齢層および高齢者の口腔機能低下症について保健・啓発・治療を行います。
ライフステージ毎の歯科健診結果と全身の健康診断結果の分析を行い、口腔と全身の関係性について分析・公表します。
訪問診療を行います。
認知症対象者の摂食嚥下障害対策および食支援を行い、低栄養を防ぎます。

健康教室、幼稚園・保育園・小中高校での授業、口腔と全身の関係についての啓発、食育の普及、オーラルフレイル#、口腔機能と低栄養予防、医科健診結果との分析、歯科訪問診療、介護福祉施設と連携・協働、摂食嚥下障害対策、食支援
   
行政や住民の身近に存在(地域密着)し、多様な場面に対応できる保健・医療を行います。
地域を総合的に診て、多職種多施設連携に積極的に取り組みます。
地域の行事に積極的に参加し、口腔の重要性について啓発します。 
住民が気付いていないニーズを掘り起こします。
住民が相談しやすい医療機関を構築します。

住民が相談しやすい診療室・待合室、多職種連携、多職種協働事業、地域ケア会議#、地域住民が集まる場(通いの場)、まちづくり会議、区長会、老人クラブ、消防団、お祭り、健康教室、人生会議#、ミールラウンド(食事指導)#
   
次世代および共に働く仲間を増やし仕事がしやすい環境を整えます。
次世代の人材教育・確保を国保直診および教育機関とともにはかります。
ICT#を利用した歯科保健活動や業務の効率化および研修を行います。
地域医療・介護学教育に参画して理解者を増やします。
研究会・学会を主催・共催します。 
国診協・ブロック歯科部会#を設立し、近接で類似の環境にある医療・介護施設職員間での研修を行います。
医師会・歯科医師会とも連携し共に協働する環境を維持します。

医科歯科連携、多職種連携、ICT#、教育、研究会・学会、人事交流、国診協・ブロック歯科部会#、医師会・歯科医師会、定期的なWEBでの研修会(歯科関係者研修会、若手の会設立)
   
開設者の期待にこたえるために取り組みます。
行政との意思疎通を密にします。
開設者の理念・意向を支えます。
施設や機能を存続させます

開設者の理念・意向、定期的な連絡会議、首長や議員との懇談、保健計画(データヘルス計画)への積極的関与、行政との人事交流、健全な経営、地域診断、住民のニーズ分析、需要の変化に応じた診療所機能の柔軟な変更、医療のあり方を検討
   
国診協内外に私たちの姿勢をアピールし、自らの活動を「歯科総合医・歯科総合衛生士」と提唱します。
保健・医療・介護・福祉の専門知識および技術を習得する姿勢を持ちます。
他(多)職種と協働して生活を支えます。
このマインドを醸成し質を向上することで、少人数で活動している歯科診療所職員の課題解決につなげます。
国診協内外への広報、季刊誌「地域医療」に執筆、各専門学会、大学授業での紹介
   
4-4.国保直診 小規模病院のありたい姿
全体総括
 国保直診小規模病院は、人口減少・少子超高齢社会の中で、その強みである機動力と多機能性を発揮し、地域包括医療・ケアの砦として、地域と共にあり続けたいと考えています。
ありたい姿の具体的内容
住民の信頼にこたえるために取り組みます。
住民とともに成長しまちづくりを担います。
地域・住民と語り合います。
地域包括医療・ケアを地域の文化として醸成します。
交流の拠点としての役割を担います。
地域のしまい方に真摯に取り組みます。

地域サロン、住民懇談会、地域交流イベント、健康まつり、健康教室、地域医療学会、健康福祉コーナー(図書館等)、施設の開放(待合室、売店、カフェコーナー等)、院内作品展・音楽会、病院ボランティア
   
多様な場面に対応できる医療を行います。
総合診療に取り組みます。 
小規模でも多機能な病院を目指します。
生活に直結した医療を行います。
関連した福祉活動に取り組みます。
あらゆる年代が何でも相談できる医療機関を目指します。

救急医療、在宅医療、巡回診療、オンライン診療#、精神科領域の初期対応、歯科診療、急性期、回復期、慢性期、レスパイト機能#、看取り、保健事業、介護予防、総合相談窓口、患者・家族支援(在宅療養、認知症、病児保育、医療的ケア児#、不登校、神経発達症、就労、生活、閉じこもり、患者会、家族会等)、居宅介護支援、デイケア、まちは大きなホスピタル#、交通手段の確保
   
周囲との良好な関係を持ち続けます。
仲間との連携を強化します。
仲間と有効な役割分担をします。
専門医療との関係を密にします。

病・病連携、病診連携、医療・介護連携、保健・福祉との連携、地域住民との連携、人材育成(ハブになる職員#)、多職種カンファレンス、多施設共同事業、医療機能の分担(診療科、病床機能)、地域医療連携推進法人#、専門外来、オンライン専門診療
   
職員が生き生きと働くために取り組みます。
やりがいのある職場を作ります。
職員が向上する機会を保障し多様なスキルを持つ人材を育成します。
働き方改革につとめます。
夢を語る会、院内ワークショップ、総合診療医、里山ナース®#・コミュニティナース#、ICT#の活用
   
共に働く仲間を増やすために取り組みます  安定した医師確保体制を確立します。
メディカルスタッフ派遣システムの導入を検討します。
医学教育に参画して理解者を増やします。
ICT*を活用した情報発信により理解者を増やします。

総合診療プログラム、都道府県派遣、初期臨床研修(地域医療研修)、大学との関係構築、寄付講座#、人材派遣会社、ナースバンク、外国人介護士、地域医療連携推進法人#、学生実習(各職種)、中高生(授業、職場体験)、SNS、ホームページ、人材育成(ロールモデル#)
   
開設者の期待にこたえるために取り組みます。
行政との意思疎通を密にします。
施設や機能を存続させます。

定期連絡会議、懇談会(首長、議員)、保健計画への積極的関与、行政との人事交流、健全な経営、地域診断、ニーズ評価、医療機能の確認、人材育成(医事知識、経営、マネジメント、ICT#等)
   
4-5.国保直診 中規模・大規模病院のありたい姿
全体総括
 国保直診中規模・大規模病院は、人口減少・少子超高齢社会の中で、住民が安心して地域で暮らせるよう、住民に寄り添った医療を提供するとともに、地域における保健・医療・介護・福祉の中心的役割を果たすことで、地域包括ケアシステムの一翼を担い、その地域になくてはならない医療施設であり続けたいと考えています。
ありたい姿の具体的内容
地域における保健・医療・介護・福祉の中心的役割を果たし、地域全体を支えます。

周囲の医療機関や施設との連携や役割分担を推進し、地域の実情に応じた医療を提供します。 中規模病院においては、かかりつけ医機能#の推進にも努めます。
医療介護連携のハブとなる医療機関を目指します。
多職種で連携し、治す医療だけではなく、その人の生活を支え、寄りそう医療を提 供します。
へき地診療所支援にも積極的に取り組みます。

医科歯科連携を強化するとともに、一般の歯科診療所では対応困難な事例へ対応します。(リスクの高い患者や緩和ケアの患者への対応、周術期口腔機能管理#、予防歯科#など)

地域包括医療・ケアシステムの一員としてかかりつけ医が行っている在宅医療を支援します。(かかりつけ医単独では対応困難な事例への支援、看取りの支援、緊急時入院病床の確保)
かかりつけ医機能#、医療介護連携のハブ、多職種連携、生活を支え寄りそう医療、へき地診療所支援、医科歯科連携、在宅医療支援
   
専門医と総合診療医が協力して、より専門的であり、かつ総合的に診療できる体制を目指します。
総合診療医と専門医、多職種で連携し、高齢化・多様化する社会に対応すべく、単一疾患だけではなく、一人の患者が抱える多くの健康問題、マルチモビディティ(多疾患併存状態)#に総合的に対応します。
高度な専門医療に関しては、自施設の専門医または地域の医療機関と連携して対応します。
緩和ケアについても積極的に取り組みます。
救急医療体制の維持、災害時の拠点、感染症対策の拠点を担える施設を目指します。
総合診療医、専門医、緩和ケア、救急医療、災害拠点、感染症対策
   
地域に根付いた医療や介護の魅力を発信するとともに、地域医療マインドを持った人材を育成します。
卒前、卒後教育にも積極的に取り組むとともに、地域医療の魅力を発信します。
他職種を尊重し、他職種と連携をとることのできる人材を育成します。
地域に目を向けることのできる、地域医療マインドを持ったスタッフの育成を目指します。
人材育成、チーム医療、地域医療マインド
   
行政と連携し、住民の健康づくりや地域づくりに取り組みます。
  行政との連携、住民との対話を通し、地域で必要とされる保健・医療・介護・福祉を常に検討していきます。
  地域住民の自助・互助能力向上へ寄与します。(健康教室、人生会議#、食育・食支援、ボランティアの育成など) 
健康づくり、地域づくり
   
医療 DX#の進展にも積極的に取り組みます。
業務を効率化することで、働き方改革を推進し、魅力ある職場作りに取り組み ます。
ICT#を活用した多職種連携の強化や、地域でのネットワークの構築を図るとともに、AI の活用やオンライン診療#などに取り組み、効率的かつ効果的に医療を提供します。
 医療DX#の普及に努め、地域全体の医療知識・技術の向上に活用します。
医療DX#、働き方改革、オンライン診療#
#用語集
あ:ICT
ICTとは、Information and Communication Technologyの略称で、「情報通信技術」と訳される。コンピュータやスマートフォン、インターネットなどを利用して情報を伝達する技術のことを指す。
い:医療DX
保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適な基盤を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えること。(参考 厚生労働省「医療DXについて」)
い:医療的ケア児
医療的ケア児とは、日常的に医療的ケアが必要となる児童のこと。例えば、NICU等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引等の医療的ケアが日常的に必要な子どもたちが該当する。医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律により、医療的ケア児及びその家族に対する支援が行われており、この法律は、医療、福祉、保健、子育て支援、教育等の多職種連携が必要不可欠であることを示している。
お:オーラルフレイル
口に関するささいな衰えを放置したり、適切な対応を行わないままにしたりすることで、口の機能低下、食べる機能の障がい、さらには心身の機能低下まで繫がる負の連鎖が生じてしまうことに対して警鐘を鳴らした概念。(参考 日本歯科医師会)
お:オンライン診療
スマートフォンやパソコン、タブレットなどの情報通信機器を用いて、医療機関の予約から診察、決済までをインターネット上で行う診療方法。
か:かかりつけ医機能
かかりつけ医とは、何でも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師。その機能を以下に示す。
・かかりつけ医は、日常行う診療においては、患者の生活背景を把握し、適切な診療及び保健指導を行い、自己の専門性を超えて診療や指導を行えない場合には、地域の医師、医療機関等と協力して解決策を提供する。
・かかりつけ医は、自己の診療時間外も患者にとって最善の医療が継続されるよう、地域の医師、医療機関等と必要な情報を共有し、お互いに協力して休日や夜間も患者に対応できる体制を構築する。
・かかりつけ医は、日常行う診療のほかに、地域住民との信頼関係を構築し、健康相談、健診・がん検診、母子保健、学校保健、産業保健、地域保健等の地域における医療を取り巻く社会的活動、行政活動に積極的に参加するとともに保健・介護・福祉関係者との連携を行う。また、地域の高齢者が少しでも長く地域で生活できるよう在宅医療を推進する。
・患者や家族に対して、医療に関する適切かつわかりやすい情報の提供を行う。(参考 日本医師会・四病院団体協議会)
き:寄付講座
寄付講座とは、大学や研究機関において、産学連携の一環として行われる研究・教育活動の一種で、奨学を目的とした民間企業や業界団体などからの寄付金(奨学寄附金)を財源に、期限付きの客員教授などを招いて開設される講座のこと。
こ:国診協・ブロック歯科部会
国診協が設置している全国8ブロックそれぞれにおいて設置を検討している歯科保健部会のこと。
こ:コミュニティナース
『人とつながり、まちを元気にする』コミュニティナースは、職業や資格ではなく実践のあり方であり、「コミュニティナーシング」という看護の実践からヒントを得たコンセプト。地域の人の暮らしの身近な存在として『毎日の嬉しいや楽しい』を一緒に作り、『心と身体の健康と安心』を実現する。その人ならではの専門性を活かしながら、地域の人や異なる専門性を持った人とともに中長期な視点で自由で多様なケアを実践する。
さ:里山ナース®
「里山ナース」®とは、日本の医療現場において、地域に根ざした看護を提供する看護師のこと。国民健康保険飛騨市民病院(岐阜県)が提唱した。この看護師は、地域住民との信頼関係を築き、地域の健康問題に取り組むことが求められ、また、地域住民の健康状態を把握し、必要な医療や介護サービスを提供することも重要な役割。「里山ナース」®は、地域住民とのコミュニケーションを大切にし、地域のニーズに合わせた看護を提供することが求められる。そのため、地域住民との信頼関係を築くことが重要であり、地域の文化や風習にも精通している必要がある。
し:指定管理者制度
公の施設の管理に関する権限を指定管理者に委託して行わせることのできる制度。公の施設の管理主体は法人、その他の団体であれば、特段の制限は設けない。(参考 公務員ドットコム)
し:周術期口腔機能管理
手術前後や、化学療法、放射線療法などの治療を行う際に、歯科医師や歯科衛生士が患者の口腔衛生状態や口腔機能を評価し、口腔に関する合併症・有害事象を回避し、口腔機能維持増進に努めること。
し:人生会議(#2)
ACP:アドバンス・ケア・プランニングとも呼ぶ。
もしものときのために、自分が望む医療やケアについて、前もって考え、繰り返し話し合い、共有する取り組み。(参考 厚生労働省)
ち:地域医療連携推進法人
地域医療連携推進法人とは、地域において良質かつ適切な医療を効果的に提供するため、病院等に係る業務の連携を推進するための方針(医療連携推進方針)を定め医療連携推進事業を行う一般社団法人を都道府県知事が認定(医療連携推進認定)する制度。
ち:地域ケア会議
高齢者個人に対する支援の充実と、それを支える社会基盤の整備とを同時に進めていく、地域包括ケアシステムの実演に向けた手法。 具体的には、地域包括支援センター等が主催し、医療、介護等の多職種が協働して高齢者の個別課題の解決を図るとともに、介護支援専門員の自立支援に資する実践力を高める、個別ケースの課題分析等を積み重ねることにより、地域に共通した課題を明確化する、共有された地域課題の解決に必要な資源開発や地域づくり、さらには介護保険事業計画への反映などの政策形成につなげる。
ち:地域枠
地域医療に従事する医師を養成することを主たる目的とした学生を選抜する枠であり、地元出身者を選抜する枠や大学とその関連病院に勤務することを従事要件とした制度。(参考 厚生労働省)
と:特定ケア看護師
厚生労働省で定める21区分38の特定行為を実施することが出来る看護師であり、臨床推論をもとに「診る」と「看る」とで患者を全人的にとらえ、医療・介護を提供する看護師。(参考 JADECOMアカデミー)
は:ハブになる職員
関係機関とのハブになれる職員。組織の壁を越えて循環できる人材で、それぞれが持つ力を十分に引き出しイノベーションが生み出されるシステムの構築を進める人材のこと。
は:パーソナル・ヘルス・レコード
個人の健康・医療・介護に関する情報。一人一人が自分自身で生涯にわたって時系列的に管理・活用することによって、自分の健康状態にあった優良なサービスを受けることができるのを目指している。血圧手帳、お薬手帳、糖尿病連携手帳、母子健康手帳など、もともとある「手帳文化」をデジタル化し、データとして一元的にまとめることにより、自分で管理・活用していく取り組み。(参考 長寿ネット)
ま:まちは大きなホスピタル
町の道路は病院の廊下、自宅のベッドは病院のベッド、電話はナースコールと思えるほど医療的な安心感を地域に提供できるようにあらゆる取り組みを行っていこうとする考え方。日南町国民健康保険日南病院(鳥取県)が提唱した。積極的に出かける医療で地域の状態を知り、地域課題に対して保健・医療・介護・福祉の専門家のみならず行政や住民も一体となった取り組みでこれの達成を目指して取り組む。
ま:マルチモビディティ(多疾患併存状態)
複数の慢性疾患が一個人に併存している状態であり、中心となる疾患を特定できない状態。患者を包括的、統合的に捉え、継続して診療を行う必要がある。
み:ミールラウンド(食事指導)
ミールラウンドとは、歯科医師、看護師、言語聴覚士、栄養士などの多職種の専門家が、実際の食事場面を通じて摂食状況を見て回ること。
よ:予防歯科
虫歯や歯周病の発生を未然に防いで、口の中の健康を維持することを目的とした治療。
れ:レスパイト機能
レスパイトとは、短期間の休息をとることができるサービス。このサービスを利用することで、家族が一時的に休息をとることが可能。例えば、家族が介護をしている場合、その方を病院に預けて、一時的に自分の時間を取ることができる。また、家族が急な用事や病気になった場合、その方を病院に預けて、自分の用事や病気の治療に専念することもできる。
ろ:ロールモデル
ロールモデルとは、自分の考え方や行動のお手本となる人物のこと。ロールは「役割・役目」、モデルは「見本・模範」を意味する英語。
#用語集
#用語集
あ:ICT
ICTとは、Information and Communication Technologyの略称で、「情報通信技術」と訳される。コンピュータやスマートフォン、インターネットなどを利用して情報を伝達する技術のことを指す。
い:医療DX
保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適な基盤を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えること。(参考 厚生労働省「医療DXについて」)
い:医療的ケア児
医療的ケア児とは、日常的に医療的ケアが必要となる児童のこと。例えば、NICU等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引等の医療的ケアが日常的に必要な子どもたちが該当する。医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律により、医療的ケア児及びその家族に対する支援が行われており、この法律は、医療、福祉、保健、子育て支援、教育等の多職種連携が必要不可欠であることを示している。
お:オーラルフレイル
口に関するささいな衰えを放置したり、適切な対応を行わないままにしたりすることで、口の機能低下、食べる機能の障がい、さらには心身の機能低下まで繫がる負の連鎖が生じてしまうことに対して警鐘を鳴らした概念。(参考 日本歯科医師会)
お:オンライン診療
スマートフォンやパソコン、タブレットなどの情報通信機器を用いて、医療機関の予約から診察、決済までをインターネット上で行う診療方法。
か:かかりつけ医機能
かかりつけ医とは、何でも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師。その機能を以下に示す。
・かかりつけ医は、日常行う診療においては、患者の生活背景を把握し、適切な診療及び保健指導を行い、自己の専門性を超えて診療や指導を行えない場合には、地域の医師、医療機関等と協力して解決策を提供する。
・かかりつけ医は、自己の診療時間外も患者にとって最善の医療が継続されるよう、地域の医師、医療機関等と必要な情報を共有し、お互いに協力して休日や夜間も患者に対応できる体制を構築する。
・かかりつけ医は、日常行う診療のほかに、地域住民との信頼関係を構築し、健康相談、健診・がん検診、母子保健、学校保健、産業保健、地域保健等の地域における医療を取り巻く社会的活動、行政活動に積極的に参加するとともに保健・介護・福祉関係者との連携を行う。また、地域の高齢者が少しでも長く地域で生活できるよう在宅医療を推進する。
・患者や家族に対して、医療に関する適切かつわかりやすい情報の提供を行う。(参考 日本医師会・四病院団体協議会)
き:寄付講座
寄付講座とは、大学や研究機関において、産学連携の一環として行われる研究・教育活動の一種で、奨学を目的とした民間企業や業界団体などからの寄付金(奨学寄附金)を財源に、期限付きの客員教授などを招いて開設される講座のこと。
こ:国診協・ブロック歯科部会
国診協が設置している全国8ブロックそれぞれにおいて設置を検討している歯科保健部会のこと。
こ:コミュニティナース
『人とつながり、まちを元気にする』コミュニティナースは、職業や資格ではなく実践のあり方であり、「コミュニティナーシング」という看護の実践からヒントを得たコンセプト。地域の人の暮らしの身近な存在として『毎日の嬉しいや楽しい』を一緒に作り、『心と身体の健康と安心』を実現する。その人ならではの専門性を活かしながら、地域の人や異なる専門性を持った人とともに中長期な視点で自由で多様なケアを実践する。
さ:里山ナース®
「里山ナース」®とは、日本の医療現場において、地域に根ざした看護を提供する看護師のこと。国民健康保険飛騨市民病院(岐阜県)が提唱した。この看護師は、地域住民との信頼関係を築き、地域の健康問題に取り組むことが求められ、また、地域住民の健康状態を把握し、必要な医療や介護サービスを提供することも重要な役割。「里山ナース」®は、地域住民とのコミュニケーションを大切にし、地域のニーズに合わせた看護を提供することが求められる。そのため、地域住民との信頼関係を築くことが重要であり、地域の文化や風習にも精通している必要がある。
し:指定管理者制度
公の施設の管理に関する権限を指定管理者に委託して行わせることのできる制度。公の施設の管理主体は法人、その他の団体であれば、特段の制限は設けない。(参考 公務員ドットコム)
し:周術期口腔機能管理
手術前後や、化学療法、放射線療法などの治療を行う際に、歯科医師や歯科衛生士が患者の口腔衛生状態や口腔機能を評価し、口腔に関する合併症・有害事象を回避し、口腔機能維持増進に努めること。
し:人生会議(#2)
ACP:アドバンス・ケア・プランニングとも呼ぶ。
もしものときのために、自分が望む医療やケアについて、前もって考え、繰り返し話し合い、共有する取り組み。(参考 厚生労働省)
ち:地域医療連携推進法人
地域医療連携推進法人とは、地域において良質かつ適切な医療を効果的に提供するため、病院等に係る業務の連携を推進するための方針(医療連携推進方針)を定め医療連携推進事業を行う一般社団法人を都道府県知事が認定(医療連携推進認定)する制度。
ち:地域ケア会議
高齢者個人に対する支援の充実と、それを支える社会基盤の整備とを同時に進めていく、地域包括ケアシステムの実演に向けた手法。 具体的には、地域包括支援センター等が主催し、医療、介護等の多職種が協働して高齢者の個別課題の解決を図るとともに、介護支援専門員の自立支援に資する実践力を高める、個別ケースの課題分析等を積み重ねることにより、地域に共通した課題を明確化する、共有された地域課題の解決に必要な資源開発や地域づくり、さらには介護保険事業計画への反映などの政策形成につなげる。
ち:地域枠
地域医療に従事する医師を養成することを主たる目的とした学生を選抜する枠であり、地元出身者を選抜する枠や大学とその関連病院に勤務することを従事要件とした制度。(参考 厚生労働省)
と:特定ケア看護師
厚生労働省で定める21区分38の特定行為を実施することが出来る看護師であり、臨床推論をもとに「診る」と「看る」とで患者を全人的にとらえ、医療・介護を提供する看護師。(参考 JADECOMアカデミー)
は:ハブになる職員
関係機関とのハブになれる職員。組織の壁を越えて循環できる人材で、それぞれが持つ力を十分に引き出しイノベーションが生み出されるシステムの構築を進める人材のこと。
は:パーソナル・ヘルス・レコード
個人の健康・医療・介護に関する情報。一人一人が自分自身で生涯にわたって時系列的に管理・活用することによって、自分の健康状態にあった優良なサービスを受けることができるのを目指している。血圧手帳、お薬手帳、糖尿病連携手帳、母子健康手帳など、もともとある「手帳文化」をデジタル化し、データとして一元的にまとめることにより、自分で管理・活用していく取り組み。(参考 長寿ネット)
ま:まちは大きなホスピタル
町の道路は病院の廊下、自宅のベッドは病院のベッド、電話はナースコールと思えるほど医療的な安心感を地域に提供できるようにあらゆる取り組みを行っていこうとする考え方。日南町国民健康保険日南病院(鳥取県)が提唱した。積極的に出かける医療で地域の状態を知り、地域課題に対して保健・医療・介護・福祉の専門家のみならず行政や住民も一体となった取り組みでこれの達成を目指して取り組む。
ま:マルチモビディティ(多疾患併存状態)
複数の慢性疾患が一個人に併存している状態であり、中心となる疾患を特定できない状態。患者を包括的、統合的に捉え、継続して診療を行う必要がある。
み:ミールラウンド(食事指導)
ミールラウンドとは、歯科医師、看護師、言語聴覚士、栄養士などの多職種の専門家が、実際の食事場面を通じて摂食状況を見て回ること。
よ:予防歯科
虫歯や歯周病の発生を未然に防いで、口の中の健康を維持することを目的とした治療。
れ:レスパイト機能
レスパイトとは、短期間の休息をとることができるサービス。このサービスを利用することで、家族が一時的に休息をとることが可能。例えば、家族が介護をしている場合、その方を病院に預けて、一時的に自分の時間を取ることができる。また、家族が急な用事や病気になった場合、その方を病院に預けて、自分の用事や病気の治療に専念することもできる。
ろ:ロールモデル
ロールモデルとは、自分の考え方や行動のお手本となる人物のこと。ロールは「役割・役目」、モデルは「見本・模範」を意味する英語。
5.国診協の取り組み

5.ありたい姿実現に向けた国診協の取り組み

 国診協は、全国の国保直診において「地域包括医療・ケア」の実践に努めるとともに国保直診を拠点として「地域包括ケアシステム」の構築を推進することを目的とし、全国国保地域医療学会、研修会の開催や調査研究事業の実施等の活動を行っています。こうした活動を継続しつつ、会員施設である国保直診が「ありたい姿」を実現するために以下のような取り組みを行っていきます。

保健・医療・介護・福祉に関連した国の動向情報をいち早く収集し、会員施設へ提供するとともに、情報に関連した会員施設の現状を把握しその取り組み方向性を会員施設に提示します。
会員施設が継続的に運営できるよう現状と課題を把握し、相談対応しながら、その対応策を検討、提示するとともに、必要に応じて国あるいは自治体といった関係機関に提言します。
国保直診の存在意義を社会にアピールし続けます。
医師会、歯科医師会をはじめ関連する団体とのより一層の連携を図り、様々な課題に関して情報共有を図るとともに、必要に応じて協議をはかります。
人材確保・育成の一環として、大学をはじめとしたその養成機関に対し学びの場としての直診施設の価値をアピールし続けるとともに、国診協自らも、病院長・診療所長、各メディカルスタッフを対象に地域医療マインドの醸成や、地域医療そのものの在り方、経営、教育手法などに関連した研修会を開催することなどによりこれからの国保直診を担う人材育成に取り組みます。また、医療介護スタッフの雇用継続が可能となるためには働きやすい労働環境整備が必須であることを会員施設に周知するとともにその実現のための取り組み例を提示します。
国保直診ならではの地域医療や地域包括医療・ケアに関する研究課題に取り組み、論文や報告書作成により社会に情報発信するなど地域医療の学究分野への貢献を支援します。
関係団体などとの協議・連携のもと、各チームが提示した「ありたい姿」実現のための総合的戦略を検討しその実現に努力します。
日本地域医療学会の構成団体の一つとして地域総合専門医養成に積極的に降り組むよう会員施設に働きかけるととともに、他の地域医療や総合診療を支える活動を行う学会や教育機関などの団体との連携もより一層図っていきます。

6.参考事例

6.ありたい姿実現に向けた国保直診の取り組み参考事例①

事例分類項目にもとづいて収集した参考事例を提示する。

【項目①】周辺施設あるいは団体との連携に関する具体的事例
1. 限られた地域資源の最大限の活用例
2. 周辺医療・介護施設の縮小撤退への対応例(負担増への対応例)
3. 多施設連携例、病診・病病連携充実例
4. 広域的連携例、土地勘が少ないところとの広域連携例
5. 医科歯科連携例
6. 行政との連携例、行政との意思疎通や理解向上の取り組み例、首長交代時の方針変更対応例
7. 住民との連携例
8. 連携強化におけるICT 利用例
9. 自施設が果たすハブ機能例
10. へき地診療所支援例
11. 他施設の持つ課題が地域の医療全体に影響したことへの対応例

小項目 施設 都道府県 取組内容
1 南砺市地域包括支援センター 富山県 障害から介護保険への移行支援の中から、仕事や生活の自立を目標に、地域資源を活用した事例。
1 あがの市民病院 新潟県 医療圏内診療所、中小病院と、当院の高度・高額医療機器(CT、MRI、シンチ等)を共同利用できる仕組みを構築し、利用していただき、地域内連携を深めている。
1 平川市国民健康保険碇ヶ関診療所 青森県 当院ではCTを保有していないため、CTを保有する近医に医療機器の共同利用(画診共同/CT)を依頼している。なお、患者様はCT撮影のみを行うために近医に赴き、診断は当院の医師が行っている。
1 日光市立国民健康保険栗山診療所 栃木県 CTやMRIなどの医療機器は、「日光ヘルスケアネット」を通じて共同利用を行っている。また当施設は栃木県採用医師(自治医大卒業後の義務年限内医師)の派遣により運営しており、なかには内視鏡を行えない医師もいるため、他医療機関に上部内視鏡検査を委託することもある。
1 佐井歯科診療所 青森県 歯科診療所施設の老築化に伴い、村から撤退した銀行の建物をリフォームして使用している。キャッシュコーナーと歯科診療所の入口は同じだが、キャッシュコーナーも撤去予定となり、利活用について検討中。
1, 10 久々野、朝日、高根診療所 岐阜県 久々野、朝日、高根の3診療所で「南高山医療センター係」としてスタッフを配置し、医療人材の相互支援体制を構築している。働き方改革や個別の事情等による欠員を相互に補完し、医療資源の少ないへき地において、可能な限り休診を避ける運用を行っている。
1, 3 公立南砺中央病院 富山県 近隣病院及び施設(特別養護老人ホーム)へのリハビリ専門職(PT・ST)の派遣を行っている。派遣先の病院・施設で専門職種によるアセスメント及びプログラムの立案や職員への知識・技術の伝達を行っている。また、派遣先の病院・施設において研修会を開催している。派遣先の病院・施設の機能や現状を当院スタッフが理解することで、転院先で継続して取り組むことができるリハビリプログラムを提供することができる。
1, 3, 6 国民健康保険宇検診療所 鹿児島県 村内唯一の診療所で、居宅事業所も2つしかなくケアマネジャーも限られている。その中で村内の住民や高齢者たちの困りごとや支援が必要としている事などを、行政や居宅事業所と常にジョインなどのツールを使用して連絡をとりあいながら支援している。
1, 3, 6, 8 公立那賀病院 和歌山県 地域の病院、福祉施設、サポートセンター(医師会、市)の栄養連携。重症化予防連携。
3 北広島町雄鹿原診療所 広島県 コミュニティ内で唯一の医療機関である診療所と、複数の介護施設でネットワーク(ICTではなく人的)を作って共働している。限られた資源を有効に活用するために密な関係を保っている。また後方支援病院から研修医などを積極的に受け入れ、教育とともに人的交流および診療協力も効果として得られている。
3 あがの市民病院 新潟県 介護施設では、施設内急変・状態変化対応に苦慮している。2017年から、市内介護施設と、「あがの介護・病院連携の会」を設立し、隔月で定期開催している(ここまで37回開催)。この連携の会では、「患者情報連絡票」を作成し、外来受診をよりスムーズにし、顔の見える関係性作りを行っている。ここには行政も参加している(サブアキュート機能の強化)。
3 あがの市民病院 新潟県 2015年から、医療圏内基幹型病院と「骨パス」、「脳パス」を作成し、骨折事例、脳血管疾患事例を、地域包括ケア病棟で受け入れ、リハビリを行い、退院支援をスムーズに行えるよう、「地域クリニカルパス」を実践している(ポストアキュート機能の強化)。
3 三戸中央病院-田子診療所 青森県 年4回の連携会議で課題解決をする。最近の解決例は、画像共有ができるようになったこと。診療体制を維持するため、双方の医師が必要に応じて両施設で勤務を行う。診療所が持つ老健施設への入退院で患者数調整を行う。将来的にはスタッフの相互交流を行う予定。
3 飛騨市民病院 岐阜県 「高原郷ケアネット」という、医療、介護、福祉、行政、歯科、調剤薬局、在宅サービスなどの事業所間で、行政区を超えた多職種連携の研修会を定期的に開催しています。それによってお互いの顔のみえる関係つくりが達成されている。
3 三浦市立病院 神奈川県 診療所で働く看護師・准看護師(以下クリニックナースという)等医療従事者の研修を神奈川県医師会の委託事業として令和元年の開始年より三浦市医師会は毎年受託している。この事業を当院看護科が講師となり主導して地域の顔の見える関係につなげている。
3 淡路医療センター 兵庫県 医師派遣 患者紹介。
3 宝塚市国民健康保険診療所 兵庫県 宝塚シニアコミニティー(特別養護老人ホーム)と契約し、週に一度入所者の口腔ケア、月に一度の摂食・嚥下指導を行い、誤嚥性肺炎予防につとめ、また、年に2回施設で入居者の歯科検診を行い、歯科治療が必要な場合は、治療を行っている。
3 公立藤田総合病院 福島県 当院医師と地域介護関連事業(各種施設・居宅・地域包括・行政)の交流を目的に、年単位で介護が抱える事情をテーマとして、講演方式で開き、後に立食で更にコミュニケーションを図れる環境がある。
3 国東市民病院 大分県 医療介護連携の促進のために、当該地域にある、ほぼ全部の病院・診療所・介護施設を年3回以上訪問し、連携の課題や当院への要望等にかかる意見聴取を行っている。また、当院所属の職位部長以上の医師複数(10名程)を市医師会員に登録し、医師会との交流を図っている。
3 広島県歯科医師会 広島県 広島県全体の病院歯科に特化した連絡協議会が1年に1度開催される。病院歯科の情報を広島県全体で共有できるようになっている。また、同時に歯科の最新情報などの研修会も開催される。
3 中之郷歯科診療所 滋賀県 市内3施設の特養とグループホームと契約し、入所時健診、及び定期健診を行い、必要に応じて訪問歯科診療に繋げている。週1回、木曜日の午後を訪問診療日として設定し、その他にも在宅の訪問診療の依頼も受けている。
3 県北西部地域医療センター国保白鳥病院 岐阜県 地域内で在宅医療に取り組んでいる民間診療所と契約し、診療所医師不在時の在宅患者の緊急や看取りの対応を行っている。
3, 4,10 県北西部地域医療センター国保白鳥病院 岐阜県 郡上市、高山市、白川村の2市1村が社員となった地域医療連携推進法人を立ち上げ、この2市1村内にある国保病院と国保診療所で広域的ネットワークを形成し、相互支援体制の中でこの地域の地域包括医療・ケアにかかわるとともに、国保病院を基幹医療機関として設定することで医師を含めたメディカルスタッフの在籍型出向により人事交流を行っている。
3, 5 大洲市国民健康保険河辺診療所 愛媛県 緩和医療のモデル事業から発展して在宅医療介護連携事業症例検討会を月1回医師会の訪問診療医、バックベッドの医師会立病院と市立病院の医師看護師地域連携室職員、訪問看護ステーションの看護師、居宅支援事業所のケアマネ、調剤薬局の薬剤師、大洲市と内子町の地域包括支援センター職員、保健福祉課職員、管轄の八幡浜保健所職員、地域の歯科医師会代表、管轄消防署代表が集まって在宅診療している患者にて症例検討会をしている。
3, 6 足寄町国保病院 北海道 多施設多職種参加により医療機能の分担を検討したほか、福祉のあり方も検討し、その結果をもとに行政が生活支援ハウス、高齢者複合施設を建設した。ソフトの構築がハード建設に先行した事例。
3, 8 日高川町国保川上診療所 和歌山県 遠隔診療支援(和歌山医大)、 病院との診療情報連携システム(青洲リンク)。
4 美波町国民健康保険美波病院 徳島県 美波町がNGO法人のAMDA(岡山市)と災害協定を結んでいる。その関連で、倉敷中央病院など岡山県の病院と、災害訓練やWeb講演会を行い、災害時の連携を準備している。
4, 8 まんのう町国保造田歯科診療所 香川県 毎月1回、当地域や周辺地域の医療機関、介護事業所、民生委員、警察署、救急隊などが集まり医療介護の情報交換、事例検討をしている。看取りや認知症のケースについてはICT(K-MIXRやMCS)を活用して情報共有しながら、在宅医療介護を行っている。
5 芸北歯科診療所、深井歯科 広島県 国保診療施設である芸北歯科診療所が令和4年度末で閉院となり、在宅および施設訪問歯科の存続が立ち行かなくなりそうだったが、新たに近隣の私的医療機関である歯科開業医と連携を模索し、なんとかスムーズに業務移行ができた。
5 芦屋中央病院 福岡県 町内の歯科開業医と連携し、週2回入院患者の口腔チェックを行い、誤嚥性肺炎等の予防に取り組むとともに必要に応じて歯科診療に繋げている。
5 新温泉町国保歯科診療所 兵庫県 地域の病院と地域歯科医師会で定期的に連携事業を行っている。病院の入院患者に対して、医科主治医から治療依頼があれば、当科へ受診不可の場合は、病院へ往診行い、歯科処置(往診でできる範囲の処置、義歯修理・調整、抜歯、歯周治療を含めた口腔ケアなど)を行っている。
5 さぬき市民病院 香川県 ・歯科衛生士(DH)2名採用。
・地区歯科医師会より、週1回歯科医師が往診にて口内評価、DHに指示。
・必要に応じてかかりつけ歯科に治療依頼。
・退院時にはDHが連携シート作成。
5 公立みつぎ総合病院 広島県 緩和ケアに入院した全ての患者は、医師から歯科へと紹介される。その後、週1回の口腔ケアで介入し、口腔内に発生する問題を未然に予防したり発生した問題に対処したりしている。また、退院する場合は在宅での口腔ケアをおこない、再度入院する場合には病棟での口腔ケアを行い切れ目のない歯科の介入を行っている。
5 県北西部地域医療センター国保白鳥病院 岐阜県 郡上市歯科医師会と契約し、月1回入院患者の口チェックを行い、誤嚥性肺炎予防に取り組むとともに、必要に応じて歯科診療につなげている。
6 三浦市立病院 神奈川県 三浦市では、行政と医師会と市立病院が一体となり胃がん検診を進めてきた。平成13年には早くも内視鏡検診を導入し、平成24年には胃がんリスク検診に統一した。平成28年には中学生対象にピロリ菌検診を導入している。中学生の陽性率は何と1.0%前後である。
6 姶良市立北山診療所 鹿児島県 行政との連携に関して、週に一度行政担当者が施設に行き、情報共有、連携を図っている。
7 飛騨市民病院 岐阜県 地域住民の皆さんが自発的に立ち上げた「飛騨市民病院を守る会」あり。会員数が約500名。各種ボランティア活動、病院デイルームへの椅子・テーブルの寄付などや講演会、定期総会などを開催し、地域住民の立場より病院への支援が行われている。
7 加賀市医療センター 石川県 病院の専門職員が直接住民の集まる場所に伺い、医療に関する疑問に分かりやすくお答えする「まちあい室講座」を実施している。講演するテーマについては医師や看護師、医療技術職など多職種が担当し、講座に対応している。
7 加賀市医療センター 石川県 毎月刊行される市の広報誌に「KMC院長室から」というコーナーを設け、市における医療、介護、病院の役割、病院で取り組んでいるものやこれから取り組もうと思うものなどを分かりやすい言葉で情報発信している。
7 宝塚市国民健康保険診療所 兵庫県 地元の自治会と連携し、月に一度の健康相談、健康教室を歯科保険センターの保健師一名、歯科衛生士一名で行っている。
8 加須市国民健康保険北川辺診療所 埼玉県 ICTによる地域医療のネットワークを構築するため、平成24年に、埼玉利根保険医療圏ネットワークシステム(愛称:とねっと)が運用開始(加須市など7市2町)。しかし、登録患者数の伸び悩み、実際の稼働状況、運営資金も問題などのため、R5年に運用が終了となった。当初は先進的な取り組みで注目を集めたが、様々な課題が浮き彫りとなり、「とねっと」としての役割は終了となった。次世代のICTへ期待される結果となっている。
8 国保直営総合病院君津中央病院 千葉県 入退院支援クラウドサービスを導入し、連携機関との円滑・効率的な転院運用が可能となった(転院調整業務の負担軽減にもつながっている)。
8, 9 公立藤田総合病院 福島県 行政予防事業への協力体制含め、各疾患別にICT関連地域ネットワークを構築(筋痙縮・慢性腎臓病・骨粗鬆症)、病診連携が図れるシステムがある。
9 黒潮町国保拳ノ川診療所 高知県 高知医療センター、県へき地医療⽀援機構専任担当官として実績を挙げてきた澤田努医師が赴任、「医師確保から医療確保へ」の考えの元、精力的に地域医療に取り組んでいる。具体的には、町、地域住民と連携した災害時の医療救護計画やオンライン診療等がある。
10 国東市民病院 大分県 大分県僻地医療支援機構の下、近隣の姫島診療所との間に「代診医の派遣に関する協定を結んで、小児科医を派遣し、島の小児医療の推進に寄与。
該当なし 松本市立病院 長野県 大学病院との転院における協定。

6.ありたい姿実現に向けた国保直診の取り組み参考事例②

事例分類項目にもとづいて収集した参考事例を提示する。

【項目②】地域とのかかわり構築のための具体的事例
1. 地域社会の課題抽出・検討・取り組み例
2. 住民とともに行うまちづくり例
3. 地域住民の自助・互助能力向上への取り組み例
4. 交流拠点としての役割を担う例
5. 地域そのもののしまい方に向けた取り組み例
6. 住民の専門医志向への対応例
7. 住民の総合診療や地域包括ケアへの関心や理解不足に対する対応例
8. 高齢者対策と少子化対策との対応バランス例(少子化に重点が置かれると高齢者対策費用の軽減が生じる可能性に対する対応例)

小項目 施設 都道府県 取組内容
1 公立那賀病院 和歌山県 地域のすし屋とフレイル予防弁当のコラボ、レンチンレシピの作成等、地域住民のために取り組まれている。
1 小林市立病院 宮崎県 西諸医師会、市民団体、小林保健所、小林市役所、当院で月1回の連携会議を実施し、近況報告や各視点からの課題を抽出し、共有等を行っている。
1 佐井村歯科保健センター 青森県 関係機関で情報共有する。歯科診療所(歯科医、歯科衛生士)学校(校長や養護教諭、PTA)保育所(保育士、調理師)役場(保健師、教育委員会)が集まり、子供たちの健康について話し合い、情報を共有することで、健康づくりや生活習慣の改善に努めている。保育所は年5回のむし歯予防教室、小・中学校では各2回ずつ歯科保健指導を実施。
1, 2 まんのう町国保造田歯科診療所 香川県 医療介護の専門職や地域のボランティアが中心となり、移動手段を持たない地域高齢者を集めて、提携するスーパーマーケットにお買い物に行き、帰ってからみんなで会食する毎月1回の買い物ツアーを4年以上続けている。高齢者を取りまく社会環境の変化に対応する介護予防対策と考えている。
2 飛騨市民病院 岐阜県 「コミュニティメディカルデザイナー養成講座」として富山大学総合診療部の山城清二教授の支援のもとで、地域住民として地域の健康まちつくりへの参加を呼び掛けた啓発活動。
2 京丹後市国民健康保険直営間人診療所 京都府 京都府北部の日本海側に面した過疎地域に位置する間人(たいざ)診療所の周辺は公共交通手段が限られている地域が多く、また、車いす利用等のため通院困難な患者がいるため、地元の自治会と一体となり車いす仕様のミニバンにより送迎を行っている。
2 浜松市国民健康保険佐久間病院 静岡県 地域マップや防災を題材としたまちあるきなどのイベントを開催することで図書館や商工会、観光協会と関り、地域の関係人口増加につとめたり、図書館に地域の健康福祉コーナーを設けたりするなどの活動につながっている。
2 南高山地域医療センター(久々野・朝日・高根診療所) 岐阜県 診療所の考え方・これからの診療所の在り方を知ってもらうため、また、住民の声を聞く機会として健康教室や寸劇を交えた説明会などを開催した。
2 大山町国民健康保険大山診療所 鳥取県 地域自主組織と一緒に、地域医療を考える会を定期開催し、住民みんなで考えたり、医師が自治会出かけて、健康講座を行ったりしている。
2 高梁市国民健康保険成羽病院 岡山県 「出前講座」を実施している。これは、「地域の皆様に親しまれ、信頼される病院」を目指す基本理念のもと、市民団体が主催する集会等に当院医療スタッフが講師として出向き、無料で講習を行うことで、市民の医療、健康づくりへの意識向上を図ることを目標としている。年に4回程度の依頼があり。
2 御調保健福祉センター 広島県 1.6歳児健診、2歳児相談、3歳児健診で言語、運動発達、対人関係など何らかの支援が必要な親子に対して母親同士の交流、仲間づくりを目的に1か月に1回当院保健福祉センターで保育士および子育て支援コーディネーターを中心として多職種が関わる「ぽかぽか子育て教室」並びに「親子教室」を行っている。
2 鏡野町国保上齋原歯科診療所 岡山県 【地域での会議に参加】国保運営協議会(保険料率決定 保健事業企画実行など)、地域ケア会議、まちづくり会議、小中学校授業、住民歯科健診、糖尿病重症化予防講座、データヘルス計画参加、SOSネットワーク主催、認知症事例検討会、議員との懇談会を通して、地域との関わり構築している。
2, 3 南砺市地域包括支援センター 富山県 市民ボランティアと取り組むフレイル予防
2, 3 中之郷歯科診療所 滋賀県 併設された医科、市役所文所、社協、まちづくりセンターなどでの啓発活動を絶えず行い、住民との関わりを持っている。
2, 3 尾道市北部地域包括支援センター 広島県 社会福祉協議会と共働し、民生委員や公民館長、周辺の高齢者施設の職員、町内の銀行職員、国保直診で働く多職種などと一緒に認知症の見守り訓練を実施。また、二層協議体の会議へ参加し、住民主体で、地域に何が必要かなど意見を出し合い、地域力向上へ取り組んでいる。
2, 4 まんのう町国保造田歯科診療所 香川県 地域の社会福祉法人のデイサービス・スペースを無償でお借りして、診療所のスタッフや地域のボランティアの方々と一緒に、地域の子どもたち、子育て世代の支援策として、居場所づくりをしている。
3 あがの市民病院 新潟県 病院では、健康寿命日本一を目指す市と協力して、地域包括医療・ケアを充実させる取り組みとして、「自助」に力を入れている。すなわち、ヘルスプロモーション活動として、年8回の糖尿病教室、年数回の地域講演会・出前健康講座、中学校での「たばこの害」・「こわ~い薬物依存」の講演、地域医療フォーラムや病院祭での講演、年10回の新潟大学医学部健康講座塾など、様々な健康情報提供の場を作っている。さらに地域活動として、七夕コンサート、クリスマスコンサート、民謡流し参加などを通して、地域の方々との「ふれあい」「交流」を図っている。
3 三浦市立病院 神奈川県 平成27年に三浦市制60周年記念事業として三浦市民健康大学を開設した。その後、毎年1回三浦市民健康大学オープンキャンパスを開催している。これには地域で働くリハビリのスタッフや医療、介護、健康に関わる多職種の人々が協力して行政・民間一体となり作り上げている。
3 中之郷歯科診療所 滋賀県 ‘8020事業‘として、乳幼児から高齢者までを対象に、こども園、小中学校の歯科教育、歯科指導に携わり、各地区でのサロンで出前講座等を実施している。住民に歯への知識の向上を計り、自ら予防意識を高めることにより、定期受診型の診療へと繋げている。
3, 7 上天草市立上天草総合病院 熊本県 一か月に一回、生活習慣病予防や健康寿命の延伸を目的とした糖尿病教室を地域住民も交えて開いている。
4 東通村診療所 青森県 「第1回さんぽ連×東通そば文殊の森リレーマラソン大会」地域の健康増進を推進する団体(さんぽ連)と東通村診療所がコラボして開催した、診療所敷地内をタスキを回して走るイベント。運動後は地域の名産である東通そばを食べ、地域住民と交流する。
4 国保直営川添診療所 和歌山県 住民に招かれる形で 毎月血圧測定と 高血圧への啓蒙を行っている。
4 上島町魚島国民健康保険診療所 愛媛県 診療所待合室で、健康に関するDVDを流したり、喫茶コーナーをつくって住民が集えるようなスペースとしたりした。
4 国保直営総合病院君津中央病院 千葉県 ①地域住民に向けた「市民講座」の開催。
②リハビリテーション科による地域住民に向けた「きみフェス」の開催。
6 薩摩川内市上甑診療所 鹿児島県 鹿児島大学病院と契約し、月1回眼科医が来島し島民の診察を行なっている。
7 県北西部地医療センター国保白鳥病院 岐阜県 3年間で病院立地旧町内の自治会を回り地域医療懇談会を開催し、総合診療や訪問診療の説明を行った。
7 姫島村国保診療所 大分県 地区の公民館で少人数の住民へ向けて、(地元出身の)歯科衛生士が口腔機能についての講話、指導を行なった。
該当なし 能勢町国民健康保険診療所 大阪府 中高生に対するインターンシップ研修。

6.ありたい姿実現に向けた国保直診の取り組み参考事例③

事例分類項目にもとづいて収集した参考事例を提示する。

【項目③】人材確保・育成に関する具体的事例
1. 人材確保例
 1-1. 人材確保に関する大学との連携事例
 1-2. 人材確保に関する周辺医療機関との連携事例
 1-3. 大学や自治医大派遣に依存しない医師確保例
 1-4. 総合病院での臓器専門科医師確保例
 1-5. 専攻医確保例
 1-6. 医師の定着化例(長期赴任増加例)
 1-7. 医師の地域内居住増加例
 1-8. スタッフ定数制限や賃金規程変更困難への対応例
2. 自院に限らず地域内の関係職種確保例
3. 自院独自プログラムへの登録者増加例
4. スタッフ高齢化(特に医師高齢化)への対応例
5. 人材育成例
6. メディカルスタッフ派遣例
7. 医学教育参画例
8. 地域医療マインド醸成例、スタッフの地域包括ケア理解のための取り組み例、国保直診施設のメリット感醸成例
9. スタッフのキャリア形成支援例
10. 資格や能力のあるスタッフへのインセンティブ付与例
11. プロフェッショナルな事務員育成あるいは確保例
12. マネジメント可能な人材の育成・確保例
13. スタッフのパターン化マンネリ化からの脱却例

小項目 施設 都道府県 取組内容
1-1 あがの市民病院 新潟県 自治体、大学と協力し、脳血管疾患や心疾患の原因となる糖尿病・生活習慣病を予防治療するセンターを2015年10月に設置し、がんの中で多い消化器がんに対応する消化器病センターを2018年4月に設置し、寝たきりの原因となる骨折、フレイルに対応する骨関節疾患センターを2019年4月に設置した。センターでは、常勤医とともに、地元新潟大学からの非常勤医師と協力して、市民における生活習慣病、消化器病、骨関節疾患の発症・進行に関する実態と要因を明らかにし、市民の健康寿命を延ばすための施策立案を、科学的かつ効果的に進めるための研究も行っている。
1-1 国保匝瑳市民病院 千葉県 近隣大学の実習生の受け入れ、近隣大学への奨学金制度や職員採用試験の案内
1-1 薩摩川内市上甑診療所 鹿児島県 鹿児島大学医学部の学生の地域医療実習の受け入れを行なっている。
1-1 大山町国民健康保険大山診療所 鳥取県 地域医療に携わる総合診療医を育成する鳥取大学医学部の教育施設として「家庭医療教育ステーション」を大山診療所に整備した。学生が常勤医の指導を受けながら実際に患者の診察に当たったり、常勤医が地域の健康啓発活動を行ったりして、人材確保に向け取り組んでいる。
1-1 佐井歯科診療所 青森県 歯科医長期休暇の代診対応。診療所に赴任後も医師が大学の医局に所属していることで、代診の派遣が可能であった。医局の教授が歯科医師会や他大学医局などに募り、後任が決定した。
1-1, 1-2 小林市立病院 宮崎県 宮崎大学からクリニカル・クラークシップ(地域包括ケア実習)として医学生を受け入れている。当院での実習の他、近隣医療機関とも連携し、幅広い分野で実習機会を設けている。また、医療だけではなく、行政実習(介護認定審査会への参加、各種健診への参加、保育園実習等)の実施や市民団体と協力し、意見交換会を開催するなど地域一体となった人材育成に取り組んでいる。
1-1, 1-2, 1-3, 5, 7 飛騨市民病院 岐阜県 「神通川プロジェクト」 医師不足の危機を脱するために、医学生から初期研修医、専攻医までの屋根瓦式の教育研修事業を継続している。10年間のうちに医学生は160名以上の実習を受け入れて、初期研修医の地域医療研修は年間40名ほどの受け入れるようになった。少ない常勤医に加えて、年間通して3~4名の初期研修医がいることで医師確保に大いに役立っており、加えて内科・総合診療科・小児科の専攻医も受け入れるようになった。
1-1, 7 久々野診療所、朝日診療所、高根診療所 等 岐阜県 大学と人材育成等に関する覚書を締結し、国保診療所を含む市内医療機関において、医学部1年生に高山市の地域医療を体験していただく早期体験実習を開始した。また、研修医の地域医療研修も南高山エリアの3診療所(久々野、朝日、高根)等で受け入れることにより、それぞれの地域や施設の特徴が横断的に経験できるための仕組みづくりを行っている。
1-2 国民健康保険宇検診療所 鹿児島県 医師が研修等で不在になる場合は、近医医療機関へ医師派遣を依頼している。看護師も2名しかいないため、訪問看護が実施できず近くの町や市の訪問看護ステーションに依頼している状況である。医師確保のため、医学生の実習を積極的に取り入れている。
1-2 府中市立湯が丘病院 広島県 病院の経営が逼迫する中で、地域の限られた人材の雇用を確保することを念頭に、同じ自治体内にある公立病院と地方独立行政法人の病院の間で出向による人事交流を行った。具体的には両者の間で契約を締結し、人材確保の難しい山間地にある公立病院に地方独立行政法人の病院から看護師、医療技術者を派遣するもの。なお、該当職員の異動については、本人の意向等を確認したうえで不利益とならないように配慮した。
1-2 美波町国民健康保険美波病院 徳島県 徳島大学からの常勤医の派遣が難しく、1)徳島赤十字病院、2)阿南医療センター(寄附講座)、3)県立海部病院(海部・那賀モデル(地域の小病院どうしの連携))、4)徳島県医師会などの非常勤医師で、診療を保持している。
1-2, 5, 8 三浦市立病院 神奈川県 地域包括ケアを牽引する地域看護師を地域で確保・育成するために中核病院と中小病院、介護施設、訪問看護などとの間で人事交流を進めている。現在「かながわ地域看護師」養成事業として神奈川県の事業化を目指している。
1-3 国東市民病院 大分県 国東市医学生奨学金貸付制度を設け、当該地域で医師確保に努めている。当該地域での一定期間の勤務の条件をクリアできれば、償還および利息の返還が免除される。現在まで、5名が利用し、内3名が医師となり、当院で現在勤務あるいは近いうちに勤務頂く予定。
1-5 三浦市立病院 神奈川県 神奈川県より医療資源の乏しい地域との認定を受け、かつ総合診療Iの条件を満たす施設となった。そこで、今年より必須である6ヶ月以上の僻地研修として総合診療専攻医の研修を受けることができた。
1, 5 相模原市国民健康保険(青根・内郷・日連)診療所 神奈川県 ①総合的な診療能力を有する医師の育成、確保を図り、医師不足や超高齢社会等に対応した地域医療体制の基盤づくりを進めるため、相模原市内唯一の医師育成機関である北里大学の医学部生に修学資金の貸付を行っている。
②寄附講座「地域総合医療学」を北里大学医学部に開設し、総合診療医の育成及び地域医療に関する研究等を支援している。
③さがみはら看護フェスティバル実行委員会が「看護の日」及び「看護週間」に実施する事業に対し助成している。
④病院に勤務する医師、看護師等の乳幼児を保育する院内保育施設設置者に対し、運営費を助成している。
⑤神奈川県ナースセンター相模原支所の運営に対し助成している。
⑥看護師等養成施設に在学する者に修学資金の貸付を行っている。
⑦相模原看護専門学校の運営に対し助成している。
⑧看護師等の有資格者でありながら看護職に従事していない者(潜在看護師)を対象とした就職相談会や技術研修会の開催等に対し助成している。⑨国保直診施設が立地している地域の通院困難への対応や、医師や看護師を含む医療資源等の効率的な活用を進めるため、市が所管する診療所を再編(統合)して医師2人体制を実現し、在宅医療の充実を図ることを検討している。
2 鏡野町国保上齋原歯科保健センター 岡山県 【専門職を地域でシェア】常勤ではなく非常勤の専門職(歯科衛生士)を教育して、時間給で歯科保健センター事業および歯科診療所業務に従事してもらっている。さらに、近隣病院の言語聴覚士および栄養士と面接し選別して時間給で同事業に従事してもらっている。
3 雲南市立病院 島根県 医師数減少からの経営危機からの改革事例。2010年「地域総合診療科」の創設。県や市町村など行政、周辺医療機関、地域住民と連携し、総合診療専門医などの育成に継続して当たっている。
3, 5, 9, 10 飛騨市民病院 岐阜県 「里山ナース院内認定制度」 地域で求められる看護師像(急性期から慢性期、在宅、看取り、経営など含めた総合的看護力を備えている看護師)を里山ナース(商標登録済)として育成する独自の教育システムを設立した。日本看護協会のクリニカルラダーとリンクしながら3段階にステップアップするものであり年々修了者が増加している。2段階目のステップでは研修費補助金を与えている。院内の看護師が活き活きと働き、そのシステムを知って新人看護師の採用にもつながっている。
5 6診療所(清見、荘川、久々野、朝日、高根、栃尾) 岐阜県 8月に高山市と市内中核病院が地域医療の課題に3者で連携して取り組むという協定を締結した。その大きな柱の一つが人材の育成・確保であり、合同研修会などの取り組みを進めている。
5 加賀市医療センター 石川県 病院が契約するコンサルタント会社指導の下、DPCデータを基に病院の状況や他病院とのベンチマーク分析ができるツールを用い、問題点や改善策を見出す「人財育成プロジェクト」を実施している。様々な職種が参加し、分析から見出した改善案から、収益向上や業務効率化などの成果を上げている。
5 にかほ市国民健康保険小出診療所 秋田県 これまで、高校生のインターンシップの受け入れ、医学生の受け入れ、臨床研修医の受け入れなどを行ってきた。高校生のインターンシップについては昨年受け入れた2人ともに看護学校に入学。今年度から、教育委員会の理解を得て、中学生の職場体験にも参画し、2人の参加があった。現時点では2人とも医療職を目指して勉強しているとのこと。また、にかほ市内の小学校3校において、キャリア教育の一環として、地域医療や総合診療についての授業を開始した。
5 公立南砺中央病院 富山県 病院では、中学生が院内ほとんどの業種を体験できる職業体験(1~5日間)を行っている。また、高校生においては自分が希望する業種でインターンシップの受け入れを行っている。PT及びOTでは幅広い専門職養成校から実習生を受け入れ、当院で実習を行った学生が数名当院の就職試験に挑み、4名が就職に至っている。
5 さぬき市民病院 香川県 医療技術部の職員を対象に、職位に応じた役割の認識向上のための研修を行い、人材育成に取り組んでいる。
5 県北西部地域医療センター国保白鳥病院 岐阜県 小学生を対象とした「わくわく病院探検ツアー」に始まり中高生を対象とした「医療介護系進学セミナー」、県内高校生を対象とした1泊2日の「岐阜県へき地医療研修会」、地元高校と連携し高校側のデュアルエデュケーションシステムとタイアップした高校在学中の「介護職員初任者研修」、医学部看護学部などの学生受け入れ、研修医の地域医療研修受け入れ、総合診療系プログラムの設置、日本最小規模の看護師特定行為研修と小学生から連続的に医療介護人材育成に取り組んでいる。
5, 7 上天草市立上天草総合病院 熊本県 地域医療の実態を学んでもらうために、船を使用して島に渡り診療を行う、鉤針外傷や紅斑熱といった地域特有の症例に触れるなど地域ならではの特色を生かした研修・実習の提供。
カルテの記載方法や内視鏡の扱い方を教えるなど研修を終えた後を見据えた研修プログラム。
6 平川市国民健康保険碇ヶ関診療所 青森県 県の委託を受け、感染管理認定看護師の資格を有する看護師を、コロナウィルスの院内感染が発生した病院や介護施設へ派遣し、感染対策の改善に向けた指導等を実施。
7 あがの市民病院 新潟県 2017年から「初期臨床研修医の教育と成長」を病院運営目標に掲げ、ホームページで広報するとともに、院内改革を実行した。改革により、2015年度から2022年度までの8年間で、初期臨床研修医数は順にゼロ、ゼロから4、15、19、18、22、22人に増加し、研修月数は順にゼロ、ゼロから4、15、23、22、31、34か月に増加した。
7 日光市立国民健康保険栗山診療所 栃木県 大学病院から毎年地域医療実習(CBL)の医学生を受け入れている。そのほか、医学生や若手医師の病院研修を随時受け入れている。
7 美波町国民健康保険美波病院 徳島県 徳島大学医学部5年生の地域医療クリニカルクラークシップや、同3年生の公衆衛生学の社会医学実習を受け入れている。
8 国民健康保険 大間病院 青森県 同地域の小中学生向け職業体験イベント。夏休みの期間を利用し、1日を通して地域医療を体験してもらう。医師だけではなく、多職種の仕事を経験し、病院が地域にとって必要であり、そこで働く楽しさややりがいを感じてもらう。
8 飛騨市民病院 岐阜県 「メディカルハイスクール」 医療系の進学を志す高校生のための研修会であり、飛騨市、高山市との共同事業。シリーズものの講演をはじめ、病院での模擬患者を想定した多職種連携の実際を体験するなどのイベントを開催している。
8, 13 鴨川市立国保病院 千葉県 全職員が参加する院内ワークショップを行い、地域医療マインドを醸成しつつ病院の方向性を検討した。
9 国保一本松病院 愛媛県 嶋本純也副院長は、地域にいながら米国医師資格を持ち、米国大学院で公衆衛生を学んだ。慢性期小規模病院において、総合診療、終末期医療、地域住民との連携に積極的に取り組んでいる。YouTubeで「愛南町に触れる会」などの発信もしている。
該当なし 公立那賀病院 和歌山県 待機脳外科医が自宅に居ながら、救急搬送された患者のオンラインデータ診療ができる。
該当なし 南高山地域医療センター(久々野・朝日・高根診療所) 岐阜県 市と県内の大学との医療人材教育に関する連携協定、市内病院と市との医療・教育に関する連携協定、地元看護学校の看護実習受け入れ、医療系を目指す高校生への診療所紹介・医療人との交流、これら医療人材の教育を通じて人材確保も目指す。

6.ありたい姿実現に向けた国保直診の取り組み参考事例④

事例分類項目にもとづいて収集した参考事例を提示する。

【項目④】施設運営に関する具体的事例
1. 多職種のかかわり事例、終末期・看取り時など
2. 総合診療取り組み例
3. 在宅療養支援例、移動時間が長く非効率であることへの対応例、診療報酬上の機能効果加算の要件クリア例
4. マルチモビディティへの取り組み例
5. 地域リハビリテーション取り組み例
6. 救急体制維持例
7. 接遇改善例
8. 医療DX 導入による業務効率化例
 8-1. DX 導入例
 8-2. DX 導入・維持費用への対応例
9. 情報発信におけるICT 利用例
10. スタッフが生き生きと働くための取り組み例
 10-1. スタッフの疲弊への対応例
 10-2. スタッフのことなかれ主義蔓延への対応例
11. 小規模多機能病院例
12. 施設形態を変えながら地域包括医療・ケアの取り組み例
 12-1. 取り組み手順明確化例
 12-2. 整理・縮小・機能選択例(そのタイミングも含めて)
 12-3. 地域医療構想4 区分への適切対応例(診療報酬上の不利益への不安解消例)
 12-4. 周囲の代替医療機関がない中での整理・縮小例
13. 財政的課題の中での施設設備更新や診療機器購入・更新例
14. 院内新規事業に関する院内スペース確保への対応例
15. 働き方改革への対応例(小スタッフでの宿日直・休憩への対応例)

小項目 施設 都道府県 取組内容
1 北広島町雄鹿原診療所 広島県 無床診療所ではあるが、ケアマネジャー、介護施設などと協力して在宅、施設での見取りを積極的に行なっている。
1 公立藤田総合病院 福島県 当院附属施設はなし、近隣協力施設と連携し、施設看取り体制を整備構築、倫理ならびに手技向上を目的に院内研修や協議と連絡会を通してコミュニケーションを図り、体制と方法を共有している。
4 芦屋中央病院 福岡県 路面バス(北九州市営バス)に加え、町内のタウンバス(芦屋タウンバス)および福祉バス(芦屋町巡回バス)の3種のバスが病院に乗り入れをしている。
4 国保匝瑳市民病院 千葉県 有資格者について、就労時間や就労日数を考慮したうえで70歳までを限度に就労可能としている。
5 公立南砺中央病院 富山県 近隣病院及び施設(特別養護老人ホーム)へのリハビリ専門職(PT・ST)の派遣を行っている。派遣先の病院・施設で専門職種によるアセスメント及びプログラムの立案や職員への知識・技術の伝達を行っている。また、派遣先の病院・施設において研修会を開催している。派遣先の病院・施設の機能や現状を当院スタッフが理解することで、転院先で継続して取り組むことができるリハビリプログラムを提供することができる。
5 小林市立病院 宮崎県 短期集中予防サービス事業所C事業受託事業所で理学療法士や作業療法士が常駐していない事業所へ専門的支援を行うことにより、利用者の身体機能改善を促進し、生活機能の自立度を高めることを目的として、小林市と地域リハビリテーション活動支援業務を締結している。
5 さぬき市民病院 香川県 ・元々、国の事業であったものを地区2市が費用負担し継続している。
・「地域の匠を育てる」をスローガンに介護事業所スタッフ向けの講習を行っている。
・内容は、運動、嚥下、口腔、栄養の4分野について、26事業所へ出前講習、年1回集合研修を企画し、地区医師会、看護協会、介護関係団体が協議会メンバーとなっている。
・コロナ禍において、この2年間はオンラインでも実施。
7 あがの市民病院 新潟県 行政と連携し、寄贈された絵画を院内廊下に展示し、定期的に入れ替えを行い、受診者・利用者の方々の「癒し」となっている。ボランティアを受け入れ、毎週水曜8時30分から9時まで、ピアノ生演奏を行っている。
8 鏡野町国保上齋原歯科保健センター 岡山県 【テレビ電話で保健指導】主に歯科衛生士が在宅または介護福祉施設と繋いで介護スタッフ教育および利用者の食事観察(ミールラウンド)口腔ケア指導を行っている。
10-1 志摩市立国民健康保険浜島診療所 三重県 随時スタッフへ聞き取りを行い、問題点の抽出・改善を行い、疲弊しない様に対応している。
10-1, 15 上天草市立上天草総合病院 熊本県 勤怠システムの適正な打刻とシステムの差異の是正、有給休暇取得状況の公表などの働き方・休み方の改善、働きやすい環境確保のため環境整備の一環で行う各部署の入職5年目までのスタッフ同士のコミュニケーション会議、ハラスメントの外部の専門家による窓口相談の設置。
12-2 にかほ市国民健康保険小出診療所・院内診療所 秋田県 2か所の国民健康保険診療所を1ヶ所に統合した。乗用車を利用できない通院手段を持たない市民の移動手段として、コミュニティバス診療時間に合わせて、運行。バス停を診療所の駐車場内に確保した。予約システムも導入し、バスの運行に合わせて、診療が終了できるよう工夫している。
12 志摩市立国民健康保険浜島診療所 三重県 診療所での外来対応・訪問診療対応のほかに、みなし事業にて訪問リハビリを行い、幅広く地域住民のケアを行っている。来年からは、更にみなし事業にて訪問看護を開始する予定である。
12 県北西部地域医療センター国保白鳥病院 岐阜県 60床の一般病床と4床の結核病床で運営されていたが、60床を段階的に地域包括ケア病床とし、46床に減床の上全病床を地域包括ケア病床とする地域包括ケア病院化を行った。なお結核病床4床も廃止した。このプロセスによりポストアキュート、サブアキュート、在宅支援を運営中心とすることが明確化された。
13 府中市立湯が丘病院 広島県 建築後50年を経過した施設の更新に取り組んでいる。今まで更新業務が停滞し、施設設備の更新が緊急に迫られたなかで、基本構想と基本設計を一体とした2年間の事業として、経営分析と設計業務が可能な共同企業体に委託したものである。このことにより、事業期間の短縮、委託経費削減(経営強化プラン同時策定)を目指すとともに、経営と設計の緊密な連携を図りながら、病院の更新に取り組んでいる。(事業期間は延長の可能性あり。)
14 国保匝瑳市民病院 千葉県 発熱患者の対応に当たり従来の感染症用診察室、待合室、前室を改装、室内トイレや検体採取スペースを新設した。
15 日光市立国民健康保険栗山診療所 栃木県 従来、時間外電話対応は診療所職員4名が交代で行っていたが、無報酬であり職員の負担が大きかった。人員の少なさや患者の少なさといった実情に見合うように、時間外対応加算を引き下げ、時間外専用携帯電話を設け医師が持つようにした。医師負担が大きくならないよう、緊急時の対応方法について健康教室や広報で周知し、不要不急の電話を減らすよう努力した。
15 府中市立湯が丘病院 広島県 医師の働き改革の実現に向けて、宿日直許可の更新を行った。県の医療勤務環境改善支援センターの医療労務管理アドバイザーの指導を受け、現状の把握を行って必要書類を作成した。同時に看護師宿直許可についても、新たに更新した。なお、現状では事務職員の宿日直許可申請も必要であるが、事務職員の宿日直については業者に委託する予定である。

6.ありたい姿実現に向けた国保直診の取り組み参考事例⑤

事例分類項目にもとづいて収集した参考事例を提示する。

【項目⑤】経営に関する具体的事例
1. 経営効率化例
2. 患者減への対応例、病床稼働率低下への対応例
3. 医業収支悪化への対応例
4. 人件費率上昇への対応例
5. 住民サービスと報酬とのバランス対応例(住民サービスが報酬に直結しない場合の対応例)

小項目 施設 都道府県 取組内容
1 あがの市民病院 新潟県 療養病床を介護医療院に転換し、病床を200床未満とすることにより、外来診療点数をアップさせ、地域包括ケア病棟入院料をアップさせることができ、経営が改善した。
1 あがの市民病院 新潟県 当院は、公設民営病院である。行政と運営団体が、毎月、外来・病棟入院・救急・健診センター・在宅医療等の状況を話し合い、知恵を出し合い、運営している。
1 市川三郷町営国民健康保険診療所 山梨県 経営効率化のために、令和3年度までは毎日違う医師が診察を行っていたが、令和4年度より常勤に近い形で診察を行った。
1 県北西部地域医療センター国保白鳥病院 岐阜県 1病棟46床で運営しているが、全病床を地域包括ケア病床としいわゆる地域包括ケア病院化を行うことで入院単価の増加が得られた。
1, 2 国保直営総合病院君津中央病院 千葉県 ①委員会で手術室運用を把握し、効率化を図るため手術枠の見直し等検討している
②部会で病棟運用を把握し、病床利用の効率化を図るため病床再編等検討している
③患者総合支援センターの開設により、地域との連携を強化し、新規患者の獲得に努めている
3 飯能市国民健康保険南高麗診療所 埼玉県 地元公民館だよりへの記事の掲載や、診察時に医師が直接声掛けを行うなどして、特定健診受診者の増を図っている。検査結果は医師が直接説明し、再検査や治療につなげられるようにしている。
3 にかほ市国民健康保険小出診療所 秋田県 総合診療専攻医の受け入れにあたって、会計年度任用職員としての予算が確保できないことに対し、にかほ市ではフルナビクラウドファンディングを利用し、今後の地域医療に対しての基金を作り、そこから専攻医などの人件費、医療器材の購入・更新を行う取り組みを開始した。目標を大幅に上回る反応をいただくことが出来ている。
3 志摩市立国民健康保険浜島診療所 三重県 今年10月から、患者様の待ち時間短縮を目的として、外来診療の予約を取り始めた。それにより、患者様が安定して受診していただけるようになった。また、計画的に検査なども対応ができる様になり、収支改善に繋がっている。
3, 5 中津川市国保蛭川診療所歯科 岐阜県 ①開業医に近い視点でのホスピタリティ充実:患者の緊張を和らげる音楽、常に医療者視点ではなく患者目線で接する。患者数や収入を減らさない工夫の上で、極力新しい設備を取り入れる。②治療困難事例(CS患者、歯科恐怖症、障がいや認知症のある方)に対し、経営バランスを少し超えたラインまで時間的にも人員的にも割いて、極力対応する。
7.策定経過及びプロジェクト関係者

7. 策定経過および国保直診ありたい姿検討プロジェクト関係者一覧

策定過程 
スタートアップチーム
第1回2022.11.08 オンライン
第2回2022.12.19 オンライン 
  ※役割完了しコアチームに移行
コアチーム
第1回2023.01.27 オンライン
第2回2023.04.18 オンライン
第3回2023.07.06 オンライン 
第4回2023.09.27 オンライン
第5回2023.11.20 オンライン
全体会 
第1回2023.04.27 オンライン
講演 「国保直診のありたい姿プロジェクト」
小野剛先生(国診協会長/市立大森病院院長)
講演 「日本の医療制度と政策:少子高齢化人口減少時代で向かう方向性を読 み解く」
島崎謙治先生(国際医療福祉大学大学院教授/国診協参与)
・  第2回2023.06.16 オンライン
講演 「医療DXについて」
 厚生労働省医政局
講演 「ビッグデータから解析する国保直診」
松田晋哉先生(産業医科大学医学部・公衆衛生学教授)
第3回2023.10.05 参集 開催地:福井県
検討チーム(4チーム)
>> 診療所チーム
第1回2023.02.24 オンライン
第2回2023.06.05 オンライン
第3回2023.08.10 オンライン
第4回2023.10.17 オンライン
>> 歯科診療所チーム
第1回2023.03.14 オンライン
第2回2023.06.05 オンライン
第3回2023.08.02 オンライン
第4回2023.08.24 オンライン
>> 小規模病院チーム
第1回2023.03.01 オンライン
第2回2023.06.08 オンライン
第3回2023.08.03 オンライン
>> 中規模・大規模病院チーム
第1回2023.03.30 オンライン
第2回2023.06.12 オンライン
第3回2023.07.25 オンライン
第4回2023.09.26 オンライン
   
  ※その他、各チームともメーリングリストで検討実施
   
プロジェクト関係者一覧(*1…チームリーダー *2…サブリーダー *3…担当副会長)
スタートアップチーム
*1  後藤 忠雄(総務企画委員会委員長)
*2  三枝 智宏(調査研究委員会委員長)
  中津 守人(広報情報委員会委員)
  和田 智子(診療所委員会委員長)
  三上 隆浩(調査研究委員会副委員長)
  田辺 大起(調査研究委員会委員・リハビリテーション部会副部会長)
   
コアチーム
*1  後藤 忠雄(「国保直診ありたい姿プロジェクト」統括/総務企画委員会委員長)
*2  三枝 智宏(小規模病院チームリーダー/調査研究委員会委員長)
  中津 守人(中規模・大規模病院チームリーダー/広報情報委員会委員)
  佐藤 幸浩(中規模・大規模病院チームサブリーダー/調査研究委員会委員)
  三上 隆浩(小規模病院チームサブリーダー/調査研究委員会副委員長)
  田辺 大起(小規模病院チームメンバー/調査研究委員会委員・リハビリテーション部会副部会長)
  和田 智子(診療所チームリーダー/診療所委員会委員長)
  武田 以知郎(診療所チームサブリーダー/診療所委員会委員)
  澤田 弘一(歯科診療所チームリーダー/歯科保健委員会副委員長)
  石塚 育子(歯科診療所チームサブリーダー)
   
検討チーム(4チーム)
>> 統括 

後藤 忠雄(岐阜県:県北西部地域医療センター長兼国保白鳥病院長)
   
>> 診療所チーム 
*1  和田 智子(秋田県:にかほ市国民健康保険小出診療所長)
*2  武田 以知郎(奈良県:明日香村国民健康保険診療所長)
  今江 章宏(北海道:寿都町立寿都診療所長)
  廣瀬 英生(岐阜県:県北西部地域医療センター副センター長兼国保白鳥病院副院長兼国保小那比診療所長)
  高原 文香(岐阜県:高山市国民健康保険高根診療所看護師)
  宇佐美 哲郎(大阪府:能勢町国民健康保険診療所長)
  東條 環樹(広島県:北広島町雄鹿原診療所長)
  松原 裕美(大分県:姫島村国民健康保険診療所看護師)
*3  中村 伸一(福井県:おおい町国民健康保険名田庄診療所長)
   
>> 歯科診療所チーム
*1  澤田 弘一(岡山県:鏡野町国民健康保険上齋原歯科診療所長)
*2  石塚 育子(青森県:一部事務組合下北医療センター佐井歯科診療所歯科 衛生士)
  高橋 通則(岩手県:金ヶ崎町国民健康保険金ヶ崎歯科診療所長)
  樋田 貴文(岐阜県:中津川市国民健康保険蛭川診療所(歯科)歯科医師)
  川瀬 千佳(滋賀県:長浜市中之郷歯科診療所歯科衛生士)
  井上 絢香(広島県:尾道市北部地域包括支援センター保健師)
  渡邊 啓次朗(大分県:姫島村国民健康保険診療所(歯科)歯科医師)
*3 海保  隆(千葉県:国保直営総合病院君津中央病院長)
   
>> 小規模病院チーム
*1  三枝 智宏(静岡県:浜松市国民健康保険佐久間病院長)
*2  三上 隆浩(島根県:飯南町立飯南病院副院長)
  小林 晴美(北海道:足寄町国民健康保険病院看護師長)
  松岡 保史(青森県:三戸町国民健康保険三戸中央病院副院長)
  齊藤 稔哲(宮城県:気仙沼市立本吉病院院長)
  内田  望(埼玉県:国民健康保険町立小鹿野中央病院長)
  小橋 孝介(千葉県:鴨川市立国保病院長)
  田辺 大起(鳥取県:日南町国民健康保険日南病院リハビリテーション科長)
  松木 克之(愛媛県:国民健康保険久万高原町立病院長)
*3  大原 昌樹(香川県:綾川町国民健康保険陶病院長)
   
>> 中規模・大規模病院チーム 
*1  中津 守人(香川県:三豊総合病院副院長)
*2  佐藤 幸浩(富山県:かみいち総合病院副院長)
  及川 友好(福島県:南相馬市立総合病院長)
  藤森 勝也(新潟県:あがの市民病院長)
  小澤 幸弘(神奈川県:三浦市立病院総病院長)
  柴田 里枝(富山県:公立南砺中央病院リハビリテーション室長代理)
  大谷  順(島根県:雲南市立病院病院事業管理者)
  占部 秀徳(広島県:尾道市 公立みつぎ総合病院診療部長)
  安部 美保(大分県:国東市民病院訪問看護ステーション管理者)
*3  海保  隆(千葉県:国保直営総合病院君津中央病院長)
   
   
 
8.参考資料

8-1.国保直診を取り巻く機会や脅威

 様々な社会情勢が、国保直診の運営に影響を与えることが考えられる。その一覧を以下に提示する。国保直診運営に当たり、各地域の状況に応じて提示した要因を自施設の強みや弱みと照らし合わせて、「機会をとらえて強みを強化 あるいは 強みを生かして機会をとらえる」、「弱みを改善して機会に挑戦 あるいは 世網によって機会を逃さない」、「強みを生かして脅威を回避 あるいは 脅威を回避するために強みを強化」、「弱みによる最悪の事態の回避 あるいは 弱みを理解し驚異の影響を最小限に」といった検討を行う際の参考となれば幸いである。

項目 機会としてとらえると 脅威としてとらえると
地域包括医療・ケアの社会での理解と浸透 ・国診協の取り組みが社会で認知される
地域包括医療・ケアの社会での理解と浸透 ・国診協の取り組みが社会で認知される
少子高齢化人口減少 ・過疎地域への地域再興への動きに特に若者の流入の可能性が生じこれが地域包括医療
・ケアとリンクする可能性がある
・地域医療の再編に向けた機会創出・民間医療機関の縮小・撤退への対応が可能になる
・医療ニーズの減少に伴う経営悪化や医療機関規模縮小
・退院支援の複雑化・困難化
・スタッフの高齢化、スタッフの確保難
・マネジメントや教育といった分野での人材不足
・スタッフ一人当たりの業務量増に伴う離職リスク
・少子化対策が(子どもがいない地域において)高齢者医療福祉予算削減につながる可能性
・物理的距離増大に伴い地域政策課題において移動手段
・購買手段の確立の優先順位が地域包括医療・ケアより上昇
多死社会の訪れ ・在宅あるいは施設看取りの増加
がん終末期患者増 ・積極的治療より地元医療機関での入院
・外来・在宅医療の需要増加
・地域の保健医療福祉の連携の強みを生かした存在意義の提示
・何でも相談できる医療機関、医療介護連携のハブとなる医療機関としての存在増
高齢者の家族代替機能が不透明 ・地域包括医療・ケアの文脈の中での支えが可能
・地域の保健医療福祉の連携の強みを生かした存在意義の提示
・何でも相談できる医療機関、医療介護連携のハブとなる医療機関としての存在増
・退院支援の複雑化・困難化
・遠距離介護対応能力の不足・脆弱(遠方子世代の親呼び寄せに伴う地域の人口減加速)
独居高齢者増 ・積極的治療より地元医療機関での入院・外来・在宅医療の需要増加
・地域の保健医療福祉の連携の強みを生かした存在意義の提示
・何でも相談できる医療機関、医療介護連携のハブとなる医療機関としての存在増
・退院支援の複雑化・困難化
超高齢者増 ・積極的治療より地元医療機関での入院・外来・在宅医療の需要増加
・地域の保健医療福祉の連携の強みを生かした存在意義の提示
・何でも相談できる医療機関、医療介護連携のハブとなる医療機関としての存在増
世界的な少子高齢化 ・外国人労働者確保の期待薄
地域医療構想 ・高度急性期・急性期病院の退院圧力が増加し、回復期・在宅機能の需要増
医師偏在対策 ・医療提供体制継続に対する国保直診のノウハウ利用機会の増加
・都道府県単位の医師偏在対策の一つとしている地域医療従事医師確保への政策的議論活発化
・大学など人材育成機関との関係が希薄な地域や施設の存在
地域医療教育重視の傾向 ・地域への若手医師の親和性向上
総合診療医への関心と認知の微増 ・総合診療医の実践の場の提供が可能
かかりつけ医機能への関心増 ・身近な医療機関への受診増加の可能性
若手の志向性や働き方に関する意識 ・若手医師・若手歯科医師の専門医・専門分野志向による地域勤務回避の傾向
・若手のスマートな勤務への欲求・若手のワークライフバランスの意識向上
働き方改革 ・労働環境改善に伴う離職防止 ・応援医師・派遣医師の確保・継続難
・若手のスマートな勤務への欲求
・若手のワークライフバランスの意識向上
新興感染症 ・行政との連携の下での公立医療機関の役割、存在意義の再認識
歯科関係者内での医科歯科連携、他職種連携への期待 ・保険上の担保
・連携重要性の認識向上
・介護施設など幅広い連携の機会創出
・施設間の意識差
口腔機能などの健康影響の学問的明確化 ・歯科分野での特に保健分野への取組への期待 ・Updateのための継続的研修機会確保要
医療DX ・人材不足地域における業務の効率化、医学誌式・技術習得における地域間格差縮小 ・高齢者の受け入れ能力不十分
・導入コスト高
・サイバー攻撃リスク
自治体機能の脆弱化 ・人材不足
・補助金・繰入金などの減額への懸念
自治体間の関係性 ・自治体枠を超える連携における自治体間の思惑の差異
合併の長期的影響 ・地域資源量増加
・自治体間調整の困難さ軽減
・物理的距離増大


8-2.国保直診自体の持つ課題

 多様な施設形態にもかかわらず共通して以下に提示するような運営課題に国保直診は直面している。その取り組み例については「6. ありたい姿の実現に向けての取り組み参考事例」の項目を参照されたい。

スタッフ不足、確保困難に関する課題
  医師確保困難
  大学医局依存性高い(医局の方針転換への対応難)
  自治医大派遣医師依存性高い
  総合病院であっても専門家がそろわない
  初期研修医希望有、専攻医希望少ない、独自プログラムへの応募少ない
  医師の高齢化
  長期赴任医師少ない
  職員の地域外居住:福利厚生上の課題や地域そのものの理解不足の助長リスク
  医療機関のみならず、地域の関係職種全体の不足
  行政の職員定数や賃金規定の壁あり(雇用したくてもできない)
運営に関する課題
  変化を前提とした取組み手順不明確
  病診・病病連携不十分
  地域リハビリテーション構築不十分
  歯科医療資源乏しい
  救急体制の維持
  地域医療構想の4区分に当てはめにくい→診療報酬上不利益の可能性
  財政的課題から施設更新や診療機器の購入・更新困難
  周辺医療介護施設の縮小撤退に伴う負担増
  働き方改革への対応:スタッフが少ない中での日当直・休憩への対応
  住民の専門医志向、総合診療や地域包括ケアへの関心・理解不足
  交流拠点となれない
  高齢者対策と少子化対策のバランス
  政治的配慮の必要性、行政の理解が希薄な面もあり
  首長交代時の方針転換対応
  民間病院内の課題がダイレクトに地域医療課題となりうる→民間病院が最終防御ライン
  新規事業に関するスペース不足
  広域連携による土地勘のない地域へのサポート
  周囲に代替医療機関がない中での整理・縮小手順不明
  人口減等の社会背景を考慮した中での整理・縮小・機能選択、そのタイミング不明
経営に関する課題
  人口減・患者減
  病床稼働率低下
  医業収支悪化
  人件費率上昇
  経営改善プレッシャーの中での医療提供、スタッフの疲弊、ことなかれ主義蔓延
  住民サービスとのバランス
スタッフ教育における課題
  キャリア形成支援不十分
  資格や能力ある職員へのインセンティブ不可
  プロフェッショナルな事務職員の育成困難(異動あるため)
  マネジメント人材不足
  接遇改善
  職員の地域包括ケアの理解不十分
  国保直診施設のメリット感希薄
  パターン化・マンネリ化
  経営改善プレッシャーの中での医療提供、スタッフの疲弊、ことなかれ主義蔓延
在宅医療における課題
  移動時間が長く非効率
  機能強化などの要件クリア困難
  DX対応 費用やその方法